イベント・勉強会レポート
ブックオフコーポレーション株式会社が運営する「シェアオフィスABBOCC表参道」の後藤大輔さんにお話いただきました。(第74回コワーキングスペース運営者勉強会®)
ブックオフコーポレーション株式会社が運営する「シェアオフィスABBOCC(アボック)表参道」の後藤大輔さんにお話いただきました。
「シェアオフィスABBOCC表参道」は2020年11月にオープンしました。新刊書店「青山ブックセンター」に隣接した、本好きにはたまらないシェアオフィスです。
日時:2021年2月24日(水曜日)18時30分~19時30分
場所:シェアオフィスABBOCC表参道(オンライン配信も同時開催)
ブックオフコーポレーション株式会社 店舗開発部 開発営業グループの後藤大輔と申します。本日はこのような場を与えていただきありがとうございます。
当社は2020年11月にシェアオフィスABBOCC(アボック)を念願かなってオープンしました。当社としてシェアオフィスの展開を検討していた2020年7月にコワーキングスペース協会の勉強会に参加させていただき、具体的な進め方等を伺いながら進めてきました。まだまだ課題もたくさんありますので、この勉強会での学びを通じてより良いシェアオフィスにしていきたいと考えています。よろしくお願いします。
創業30年を迎えたブックオフ、「本だけじゃないブックオフ!」をキャッチコピーに展開しています
まずは、当社ブックオフについて、簡単に説明させていただきます。ブックオフは1990年に創業してから、30周年を迎えることができました。創業当時は本・ソフト等メディアコンテンツの買取・中古販売を行っていましたが、最近では洋服やブランド品・家電・おもちゃなども扱い運営しています。
では、中古屋のブックオフがなぜシェアオフィスをやっているのか、説明させていただきます。当社は30年間、中古品・リユース品の売買、リサイクル業を通じて地域貢献を行ってきました。そんな中で今後は中古・リユースという枠にとらわれずに、地域のお客様の満足に繋げていきたいと考えています。そこで「本だけじゃないフックオフ!」をキャッチコピーに、色々なモノ・サービスを展開していこうと考えています。
例えば、本以外の日用品・洋服・フランド品も含めた「BOOKOFF SUPER BAZAAR」という総合リユースを全国に約50店舗運営しています。また2020年に「aidect」というジュエリー加工販売を行っている会社を吸収合併し、ショッピングセンターもしくは百貨店で営業しています。ABBOCCと同じビルにある「青山ブックセンター」も、当社ブックオフが運営している新刊の書店です。それ以外にも「hugall」で百貨店のコンシェルジュを通じて買取を行っています。
当社のミッションは、リユース業にとどまらず多くのお客様に「楽しく豊かな生活」を提供することです。そして、ABBOCCのシェアオフィス事業もその一つとしてとらえています。
シェアオフィスオープンの背景 もともと事務所があったスペースの有効活用
なぜシェアオフィスを作ったのかというきっかけについてお話します。
ABBOCCは青山ブックセンターの一部区画にて運営しており、ABBOCCのある場所は、もともと当社のIT部署が事務所として使用していました。2019年に業務拡張でこの部署が移転したのですが、その区画を有効に活用する方法がないか、弊社内で議論を重ねてまいりました。
青山というロケーションは感度の高い美容関係やファッション関係の方もたくさんいらっしゃるので、シェアサロンという形でフリーランスの美容師さんやネイリストさんが使えるようなスペースを作ろうかという案もありましたが、地下2階で給排水等の設備の問題があったため、実現しませんでした。そんな中、それならシェアオフィスはどうかというご提案をいただき、その発想で進めてみようとなったのがきっかけです。
ABBOCCのあるスペースは、もともとITオフィスだったこともあり、床・壁・天井は一般的なオフィス仕様で、机と椅子もきれいなままでしたので、シェアオフィスへ容易に転用可能な状態でした。
シェアオフィスABBOCCのオープンに向けて
コワーキングスペース業界の調査からのスタート
当社としてシェアオフィスに関して全く無知の状態だったので、シェアオフィスとは何か調べるところから始めました。そうすると、シェアオフィスだけではく、コワーキング・レンタルオフィス・サテライトオフィスなど、色々な形態があることがわかりました。
レンタルオフィスとサテライトオフィスは、一般的に利用する区画、利用者(法人)が定められた利用となりますが、より多くの方に利用していただきたい我々の思いと合致しないことから、見送りました。コワーキングスペースは共同利用型・コミュニティの場としてのオフィス、シェアオフィスはその場所を提供することがメインというとらえ方をしました。
コワーキングスペースとシェアオフィスで検討した結果、シェアオフィスが当社に合っていると考え、進めることにしました。その理由としては、新型コロナウイルスの影響もあり、この1年間で働き方に大きな変化があったとことも要因の一つです。コロナ前から働き方改革、働き方の改善ということでノマドワーカー・フリーランスが増加していたと思いますが、新型コロナウイルスの蔓延によって一気に広がったと思います。このように、自社オフィス以外の就労が増えている環境であり、シェアオフィスの需要は高まっているだろうということで、シェアオフィスを採用しました。
また、立地としても表参道・青山エリアはもともとシェアオフィスが多く、マンションの一室をオフィスにするなどフリーや小規模事業主の多いエリアです。また、青山ブックセンターではABC(青山ブックセンター)コミュニティというコミュニティサロン作りを進めています。ABCコミュニティにはフリーランスの方も多く参加されており、青山ブックセンターの中にデスクがあったらというお声をいただいていたことも、シェアオフィスが適していると考える一つの材料になりました。
シェアオフィスの方向性を決定
次に、シェアオフィスにはどのような設備があるのかを調べました。その中から当社にできること、お客様が必要とすることは何かということを検討しました。
青山という立地はオフィスが多い便利な立地ということもあり、外回りがメインの会社員の方・リモートワークを行っている会社員の方にセカンドオフィスとして気軽に使っていただけるスペースを目指しました。また、ちょうど目の前が青山学院大学ということもあり、学生の方に自習スペースや読書をするスペース、セカンドプレイスとしてうまく利用していただくことも考えました。
スペースを貸し出すという考え方のビジネス形態としては、閉鎖的なものから開放的なものまで、またビジネス性向の強いものから趣味性向の強いものまで、さまざまな形態があります。ビジネス性向が強いものとしてはシェアオフィスだけでなくレンタルオフィスやコワーキングスペース、趣味性向が強いものとしてはネットカフェやカラオケボックス・図書館・カフェなどがあります。その中で、当社は、シェアオフィスを利用する会社員の方・図書館を利用する学生の方に利用していただけるようなシェアオフィスを作ろうと考えました。
社外の専門家からのアドバイスも
社内の担当だけでなく、コワーキングスペース協会、並びに株式会社コミュニティコムの星野社長、株式会社アイカンパニーの石村社長にアドバイスをいただきながら、開設準備を進めてきました。
ホームページの作成・広告に関しては、株式会社コミュニティコムにご協力をいただきました。
2020年6月からプロジェクトを始動し、アドバイスを頂きながら何度も打ち合わせを重ね、11月9日にシェアオフィスABBOCCをオープン・営業を開始しました。
「ABBOCC」は青山ブックセンターと当社名のアルファベットからつけました
シェアオフィスABBOCCですが、「アボック」と読みます。新規事業なので全く新しいイメージのものにしたいという想いもあり、社内部署で公募したものの中から決定しました。青山ブックセンターを略してABC、ブックオフコーポレーションを略してBOCなので、それをくっつけて作った名前です。
フリーアドレスの席を26席 落ち着いて集中できるオフィスをイメージ
レイアウトとしては、まず入店経路を検討し、売場側からではなく建物の入口から入っていただくことにしました。机はオフィスに使用していたものを転用、椅子はクリーニングをして再利用しました。当初は会議室を作るための壁を設置しフリーアドレスの席を17席作る予定でしたが、会議室は作らずフリーアドレスの席を26席に増やしました。コロナの感染対策と利用者様の集中しやすさを考慮し、各机にはパーテーションを設置して半個室的な演出をしています。また、1200㎜サイズの広い机がメリットだと考えています。
サービスは、オプションとして住所利用と郵便受け取り、荷物保管のレターロッカーの設置をすることにしました。
イメージカラーは落ち着いて集中できるオフィスをイメージし、黒と茶色をベースとしています。オフィススペースの壁や天井は、大きな破損や汚れもないため元々の白い壁を流用しています。他にも、書棚を4スパン設置し、青山ブックセンターの選書を陳列しています。こちらの選書は新刊ですが、ご利用者様は自由に読んでいただけます。
月額ユーザー、従量課金を分けてターゲットを設定
月額ユーザーのターゲットは、フリーランス・リモートワークの方、外回り営業などのビジネスワーカーの方を想定しています。
従量課金(ドロップイン)に関しては、外回り営業などのビジネスワーカーの方の作業スペースや青山学院大学など学生の自習スペースとして使っていただきたいと考えています。
利用時間は年末年始を除く9時から22時まで、これはビルの利用時間の最大時間となっています。
サービスとしてはWi-Fi・ロッカー貸与・TELブース・郵便物受取・複合機・その他備品を設置しています。
契約条件は、月額料金が1ヶ月1万7,600円、従量課金が1時間550円・1日最大1,980円です。
その他オプションとしてロッカー利用が月額3,300円・ロッカー付の郵便物受取・保管サービスが5,500円、入会金が3,300円となっています。
複合機は白黒10円・カラー50円、PCモニターやキーボード・ケーブル・デスクライト・事務用品なども無料の貸出備品としてご用意しています。
※2021年3月に料金改定がありました。上記は現在の内容を掲載しています
無人運営によって人件費がかからないため、コストカットすることでリーズナブルな価格でご提供しています。コミュニティ形成とイベントなどは現時点では計画していません。
可能な限り無人で運用し、コストカットを実現
運用方法はオフィス運営マネージャーやスタッフを置かない、無人運用のシェアオフィスとなっています。ゆくゆくは全国400店舗ある当社の既存店にインストールしたいと考えています。
無人管理をする上での課題としては、入会方法や決済方法、日常の維持管理をどうしたらいいかということでした。
入会に関しては、現地では行わずWEBで申し込みをしていただきます。WEBでの受付が完了したらメールをお送りし、青山ブックセンターの店舗でカードを受け取っていただくシステムです。そしてカードを利用して自由に入退店をしていただきます。登録いただく内容は、氏名・メールアドレス・電話番号のみですが、カード受け渡し時には申込者の本人確認を実施しています。
決済方法に関しても現地で支払いは行わず、クレジット代行会社によるカード決済のみを採用しています。クレジットカードに関しては、入会金を即時決済することによって同時にカードの有効性を確認し、有効期限切れ等で料金が回収できないというリスクを軽減しています。
当社で管理しているのは、最低限必要な氏名・電話番号・メールアドレスのみで、個人情報に関する漏えいリスクを排除しています。クレジットカード情報は決済代行会社にお任せしているため、当社としてクレジットカードの情報は持っていません。
無人管理ということで、ABBOCCに電話は有りません。オフィスに関する使い方やその他の問い合わせは、WEBサイト内の「よくある質問」を充実させることでご利用者様の不明点をクリアにするよう対応しています。日常の清掃と緊急対応は、隣の青山ブックセンターのスタッフが対応しています。そのため完全無人ではなく、必要に応じてスタッフが対応する形です。
その他、WEBやSNSを活用し、お問合せやクレームへの対応はリモートで行っています。ドリンクサービスは導入していません。施設内に緑がないととても無機質な空間になってしまうのですが、管理するために労力が必要になってしまうため、フェイクグリーン(造花)で対応しました。
新規導入のスマートロック連携課金決済システム
新規で導入したシステムは株式会社コミュニティコムに開発を依頼しました。
まず、ご利用者様がABBOCCのサイトを訪問し、氏名・メールアドレス・電話番号を登録して会員登録を行います。その時点でクレジットカードにて入会金をお支払いいただきます。さらに月額サービスなのか、オプションの利用をするのかなどの登録をしていいただき、青山ブックセンターの店舗にてカードの受け渡しを行います。
店舗はスマートロックシステムを採用しており、会員カードを利用して入退館をしていただきます。スマートロックには、株式会社フォトシンスの製品であるAkeurun Proを使用しています。カードリーダーにカードを通すと施錠が解除されます。このシステムで会員カードの利用状況ログをとり、CSVに書き出して決済代行会社が決済、クレジットカードへ料金を発生させるようにしています。
ホームページは、システムのイメージカラーと共通するようにシックなイメージで作成しました。内容は、コンセプト・フロア/アクセス・設備・利用料金・利用方法・質問事例集・会員登録/マイページ・混雑状況となっています。混雑状況に関しては、0-19席は余裕、20-25席で混雑、26席以上で満席と表示されるようになっています。
今後は既存店への展開も
今後、当社の既存店舗に有休スペースが生まれてくるのではないかという予測があります。それを踏まえ、今後の展開としてその有休スペースをABBOCCとして有効活用できないかということを考えています。既存のモノの売り買いだけでなく、スペースをご利用されるお客様にも展開していくということです。
今後の課題は、2020年11月にオープンしたばかりなので、ソーシャルメディアなどを通じて、まずはABBOCCの施設があることを認知していただくことだと思っています。次に、青山ブックセンターのコミュニティ(ABCサロン)と連携をしていき、サロンのメンバー様にコワーキングスペースとしてABBOCCを使っていただきたいと考えています。
また、ご利用者様から商談スペースや会議スペースがあったらいいなというお声をいただいています。今後、会員様のご要望を考慮して、スペースの確保や区画の見直し等を考えたいと思います。
現在、ABBOCCでは入会金割引キャンペーンを行っています。通常は入会金3,300円のところ1,100円で入会できるため、興味のある方はぜひご利用ください。
本日はありがとうございました。
青山ブックセンター 選書サービスの紹介
青山ブックセンターはブックオフコーポレーション株式会社が運営する新刊の書店です。青山・表参道にお店ができて24年目になりますが、周辺にはファッションや広告、メーカーなどモノづくりに関わる方が、企業にお勤めの方・フリーランスの方を含めたくさんいらっしゃいます。そのような方々からのリクエストやご購入いただいた売上データなどを真摯に分析して、棚づくりに反映させる、商品作りに反映させるということを、ずっと行ってきています。
本の販売だけでなく、コロナになる前はほぼ毎日セミナーやイベントを開催していました。その他、企業法人様向けのサービスで外商サービスを行っています。10年ほど前から、企業法人様から本を選ぶのを手伝ってほしいというお声がけをいただくことが増え、当社として、本を選ぶ「選書」をサービスとしてまとめ、提案してきました。
10年前の震災を機に、分譲マンションのディベロッパー様からお声がけをいただき、分譲マンションの共有スペースにブックラウンジやライブラリを作るお手伝いをしてきました。10年間で累計300棟以上のマンションの共有スペースに本を設置させていただいています。このような需要のきっかけは、震災でご近所様づきあいの大切さを感じた方が多かったことだと思います。隣の家のドアをノックするのは勇気がいるので、共有スペースにブックラウンジがあることで、本を通じて住民の方たちがコミュニケーションをとれるということで高評価をいただきました。その後、ホテルや旅館から宿泊者様向けのサービスとしてブックラウンジ・ライブラリを採用したいとお声がけをいただくようになりました。近年では、シェアオフィス・コワーキングスペース様、企業様のオフィスリニューアルの際などにもお声がけいただくようになってきました。
当社の選書サービスで心がけているのは、「施設やスペースのコンセプトやテーマに合わせること」と同時に、「利用される方々に合わせる」ということが重要であると考え、念頭に置いています。ABBOCCに配置している本の選書も、このような経験・考え方に基づき選んでいます。現時点では、1ヶ月に1回程度の頻度で入れ替えを予定しており、定期的に目新しい本をご覧いただくことができます。青山ブックセンター・ABBOCC共にぜひご利用ください。
この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。
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