イベント・勉強会レポート

キンコーズ・ジャパン株式会社が運営するコワーキングスペース「ツクル・ワーク新宿センタービル店」について、新ブランド推進グループ マネージャーの山田和弘さんにお話いただきました。 (第76回コワーキングスペース運営者勉強会®)


キンコーズ・ジャパン株式会社が運営するコワーキングスペース「ツクル・ワーク新宿センタービル店」について、新ブランド推進グループ マネージャーの山田和弘さんにお話いただきました。

日時:2021年4月21日(水曜日)19時~21時
場所:ツクル・ワーク新宿センタービル店(オンライン配信も同時開催)

キンコーズ・ジャパン株式会社の山田和弘と申します。現在は、新ブランド推進グループのマネージャーをしています。本日はキンコーズ・ジャパンの運営するコワーキングスペース、ツクル・ワーク新宿センタービル店にてコワーキングスペース勉強会を開催しています。よろしくお願いします。

キンコーズはコニカミノルタグループの一員です

本日はまずキンコーズ・ジャパン株式会社(以下:キンコーズ)がどのような会社なのかをご説明した上で、当社がなぜコワーキングスペースを運営することになったかについてお伝えします。

まず、キンコーズは、コニカミノルタ株式会社が100%の株主となっており、コニカミノルタのグループに属しています。従業員は約1200名です。「キンコーズ」はアメリカで立ち上げられた企業で、1992年の2月に日本に進出しました。アメリカでは、大学の学生街で学生をターゲットとしたコピーショップを起業したことが事業の始まりです。

日本進出当時は、アメリカと同じく学生向けのビジネスモデルを展開していました。しかし、日本では学生向けのビジネスがアメリカほどはうまくいかないということで、ビジネス向けにシフトチェンジし、多くのお客様にご利用いただいてきました。2005年にはフェデックス キンコーズに社名を変更し、2012年にコニカミノルタグループに入り、キンコーズ・ジャパン株式会社に社名変更いたしました。

「ものを作る企業であるコニカミノルタ」「サービスを提供するキンコーズ」
シナジー効果を最大限に発揮したい

コニカミノルタグループの一員となった理由は、キンコーズはコピーセンターが起源なので、複合機メーカーであるコニカミノルタと事業の親和性があったことが挙げられます。
ものを作る企業であるコニカミノルタと、それをお客様に提供するサービスを展開するキンコーズが連携することで、シナジー効果を最大限発揮することを目指しています。
その後、デザインセンター開設や大型出力・装飾を行う事業をグループに加えるなど色々な取組を経て、2019年2月にコワーキングスペース「ツクル・ワーク新宿センタービル店」を立ち上げました。

会社の理念は「想いを創り、伝えるに寄り添い、世界に彩りを」、そして「オンデマンドソリューションでそれを叶える」ということです。
「必要な時に必要な数だけ」印刷を行う「オンデマンドプリント」をはじめとして、プリント事業だけにとらわれず、お客様の困っていること・潜在的な課題に対してオンデマンドソリューションで課題解決することを目指しています。

キンコーズの事業内容

次に、キンコーズの事業内容をご紹介します。

キンコーズは大きく6つの事業を運営しています。メインとなるオンデマントプリント事業、デジタルソリューション事業、マーケティングサービス事業、コワーキングスペース事業、貸会議室事業、EC事業です。

オンデマントプリント事業

オンデマンドプリント事業は、ドキュメント印刷や紙だけに限らず「プリントする」という事業です。
上流工程であるデザインから最終的に成果物を使用する際のサポートまでワンストップでサービス提供しています。また、企業の委託を受けて企業内でプリントセンターを運営するサービスも行っています。

最近では、新型コロナウイルス対策として、飛沫防止パーティションやマスクケース等をオンデマンド製造して販売しています。

生産はSPC(セキュアードプリンティングセンター)という情報セキュリティに配慮した大型工場と店舗で行っています。

現在の店舗数は、直営店舗47拠点、FC点の15拠点(九州・中四国地方)です。

デジタルソリューション事業

近年力を入れている事業としては、デジタルソリューション事業があります。

デジタルソリューション事業の主なテーマは、「デジタルトランスフォーメーションの支援をする」ということです。「オンラインとオフラインをシームレス」するサービスを提供しています。

今まで会社の総務の方が担ってきた在庫管理や発注管理・販促物の管理等をクラウド上で一括して管理するサービスや、デジタルカタログを作成するサービスなども提供しています。

また、法人契約を結ぶと日本中どこのコンビニでもプリントしていただくことができるコンビニプリントサービスも提供しています。

音声配信や撮影の配信も承っています。他にも、紙以外にEカタログと呼ばれる電子カタログの製作を行っています。最近では、新型コロナウイルス感染防止が働く環境における課題となってきていることもあり、三密を回避するようなソリューション、例えば机に貼る飛沫防止のシールや、空気清浄機、パーティション等も工場でオンデマンド生産し、提供しています。

マーケティングサービス事業

マーケティングサービス事業は、大型ショッピングモールなどで、主に大型インクジェット出力によって、会場の装飾を行う事業です。クリスマスやバレンタイン等季節の飾りつけなどを行っています。大型出力インクジェットによって、会場の装飾を担っています。企画の段階から入り、集客やWEBプロモーションとの連携等も行っています。また、ショッピングモールの中にある「メディアステーション」という、テナントの方が利用する小さい版のキンコーズ店舗を運営しています。

コワーキング・ミーティングスペース事業

最後に、新規事業として、コワーキング・ミーティングスペース事業があります。実際に場を提供してお客様の出会いや機会を作り出することを目標に運営しています。これらは、キンコーズのブランドとは違うブランドで展開しています。

その他、貸し会議室の運営や、ECモール内店舗の運営を行っています。

働き方改革 キンコーズも変革を

ここからは、なぜキンコーズがコワーキングスペース事業を始めることになったのか、経緯についてお伝えします。

キンコーズの従来の店舗では、駅に近い一等地と呼ばれる場所に店舗を構え、有人でお客様をお迎えする形で、プリントを中心としたサービスを提供しています。店舗での取り扱いサービスには、デザイン・チラシなどのドキュメント印刷、名刺封筒の印刷、3Dプリント等があります。

その他、店舗を起点としてお客様から課題や要望、販促什器の作成等を受け付け、製品の形にしてお渡しするというサービスを行っています。PCの貸し出しも行っており、手ぶらでもコンピューターを使って作業やプリントができるような環境をご提供しています。デジタルソリューション事業領域のご依頼も、店舗にて承っています。

また、ツクル・ワークがオープンしたのは2019年2月ですが、2018年頃から働き方改革の話題が出てきて、テレワークも浸透してきました。そうやって人々の働き方が変わってきているにもかかわらず、キンコーズのビジネスは紙からデジタルのソリューションに移行しつつあったものの、「お困りごとをお伺いして解決する」というスタイルは変わっていませんでした。しかし、「働き方が変わってきているのであればキンコーズも変わらなければ」ということが課題となっていました。

このようなさまざまな要因により、「サブブランドとしてキンコーズのナレッジを生かした新しい空間」としてコワーキングスペースを作ることになりました。ツクル・ワークは、仕事だけに限らず、課題を解決するための空間として使っていただく、機会を提供する場所として位置付けています。「ユーザーの多様化に応えるため、新しい店舗形態を創造する」というミッションの元、運営しています。

キンコーズ店舗のお客様の中には、趣味で制作物を創るという方も一定数いらっしゃいました。店舗でコミケの時期に徹夜で作品を作っておられる方、週末のフリマ用に作品を作りに来る方、学校の課題で創作活動をする方などです。そのような、キンコーズという形態の店舗では不便を感じておられるかもしれない方に、仕事や趣味の創作活動の場として、作る思いを持った人が集まる場所として、ツクル・ワークを位置づけています。

キンコーズは「顧客の課題や問題を解決する場所」
ツクル・ワークは「目的を実現する機会を提供する場所」

キンコーズは顧客の課題や問題を解決する場所として、ツクル・ワークは目的を実現する機会を提供する場として、役割を分けて展開しています。現在コワーキングスペースはこの1店舗のみです。今後の展開についてどのような形態であるべきかも含め、検討しています。

時代の流れとしてペーパーレス化する中で、実店舗中心の運営から、いかにオンラインやデジタルソリューションを活用するかどうかも、引き続き力を入れていくポイントになっています。

なぜ、第一店舗目として新宿センタービルを選んだかというと、この店舗がある新宿センタービルは、元々キンコーズの新宿センタービル店として今のスペースの半分くらいで長年運営してきた場所でした。新宿には新宿センタービル店以外にも、西新宿店、高田馬場新宿南口店、新宿御苑店と近くに4店舗あり、新宿センタービル店はちょうど真ん中あたりに位置しています。それであれば、今までこの店舗をご利用いただいていた方にもご迷惑をかけずに、キンコーズの近隣店舗を使っていただきながらコワーキングスペースもご利用いただけるのではないかということで、この店舗の看板を変えて展開しました。

キンコーズの「オンデマンドの利便性」ツクル・ワークの「ビジネス拠点の快適性」

ツクル・ワークの特徴を紹介します。

ツクル・ワークでは、キンコーズらしいポイントとして、大型のポスターをプリントできる機械を設置しています。セルフサービス・有料でご利用いただけます。他に、コンピューターの貸し出しをしています。特徴として、Adobe Photoshop、Illustrator等デザイン・クリエーター用のソフトを充実させている点です。

また、キンコーズの看板はついていませんが、受付ではその他のキンコーズのサービスの受付もしています。デザイン相談を受け付けることもあります。

キンコーズとツクル・ワークの差別化ポイントとしては、キンコーズは「オンデマンドの利便性」、ツクル・ワークは「ビジネス拠点の快適性」という部分に重点を置いて提供しています。

キンコーズは、クイックさを求めて来店される方も多く、今すぐ完成品が欲しい方がいらっしゃる駆け込み寺的なイメージもあります。ツクル・ワークは、そうではなく相談を受けながらじっくり作業をするのが向いている場所だと思っています。

店舗運営から見えてきた課題

実際に店舗運営を始めてみると、出店時想定とニーズのギャップがありました。場所に紐づくニーズまでがきちんと把握できておらず、元々のキンコーズのイメージが抜けきれなかったという反省があります。

客層は、個人事業主や副業の方が多いイメージでしたが、実際のニーズは会社員の方が大半でした。ここはすぐ近くに都庁もあり西新宿のビジネス街に行く途中にあるのですが、いらっしゃるのはほとんどがドロップインの方で、訪問先に行く前に少し資料の整理をするなど、スポットで使う方でした。

コワーキングスペースといえば、メンバーと一緒に働いたり隣に座った人と交流したりする場所と思っていましたが、ソロワークの方が多かったです。コロナの影響もあるかもしれませんが、現段階ではコミュニケーションが生まれるということもあまり見られない印象です。

その他、サービスや設備は最低限度のものがあればいいということ、キンコーズユーザーが利用されているわけではなくシナジー効果は低いこと、利便性よりも低価格を重視する方が多いという現状がありました。

会社員ではまだまだコワーキングスペースの利用料金を経費精算できる方は少ないので、価格には敏感に反応されることがわかりました。また、使っていただいている方を見ていると、がっつりそこで何かを作成するわけではなく、最低限度ネットワークにつながっていれば要件を満たせるということが多いようでした。

キンコーズ/ツクル・ワーク 客層の違い

ツクル・ワークでもキンコーズオーダーを受け付けることもありますが、それはコワーキングサービスをご利用される方とは別の方が利用されている状況です。今後の課題として、ワークスペースを利用される方にとって役に立つサービスを検討していく必要性を感じています。また、キンコーズのことを知らない方も多いので見せ方も検討する必要があると思っています。

これらの点を、実際のニーズに合わせてどうやって軌道修正していくのかが今後の検討課題です。店舗全部をワークスペースにするのではなく、キンコーズ店舗の一部分を滞在型のワークスペースにするハイブリット型店舗などが考えられるかもしれません。

ニーズをくみ取り、さまざまな軌道修正を

ツクル・ワークをオープンしてから3年間運営してくる中で、

  • 価格変更:土日・夜利用料金プランや法人プラン追加 
  • レイアウト変更:個人で集中したい方向けのパーティション増設
  • キンコーズサービス受注強化
  • イベント開催:イベント誘致やキンコーズと取引のある企業様とのコラボイベント開催
  • Hobbyコンセプトの展開:作品の展示など
  • ECチャネルとの連携:イベントや展示会などで紹介した商品をECチャネルにて販売

など、さまざまな調整を行ってきました。

例えば、Hobbyコンセプトでは、デジタル上で創作活動をされている方の作品を実際のものとしてアウトプットして展示したり、全国に本を出版されている方と関連グッズを作って売ったりするイベントを店頭で開催しています。フォトスタンド、ノート、コースターなどのコラボ製品を作り、店頭とECチャネルで販売しました。店舗で販売できるのは新宿店一店舗なので、会場で実際のイベントを行いながらECを活用して発信していきました。ECでイベントを知った方が、実際に来店いただくという流れもできています。

このイベントは、コロナの影響で活動や発表の機会がなくなった方にもご活用いただいています。「OKB(お気に入りボールペン)48選抜総選挙」という、何年も文房具屋さんで展開してきたイベントが、コロナの影響で例年のように開催できなくなったということで、2020年はツクル・ワークのスペースで開催しました。もちろん、感染対策には細心の注意を払いながら、YouTubeを使って結果発表をするなどの試みも行いました。

現在は、母の日父の日向けに「1点ものを創れます」というギフトイベントをやっています。今まで一点物の注文受付は、ECのみだったため、素材感などもわかりませんでした。その部分を、実際にモノを見て相談をしながら頼めるリアルの店舗として受付を開始しています。これは先ほどとは逆の、ECで販売していたモノの、リアルな場での提案の機会をという試みです。

このようにツクル・ワークは現在3年目に入りましたが、さまざまな試行錯誤をしながら、運営しています。

ありがとうございました。


この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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