イベント・勉強会レポート

「コワーキングスペース八王子8Beat」を運営する株式会社共創空間 代表取締役 小柳次郎さんにお話いただきました(第80回コワーキングスペース運営者勉強会®)


株式会社共創空間が運営する東京都八王子市にあるコワーキングスペースで2021年7月にシェアオフィスと会議室を増床オープンした「コワーキングスペース八王子8Beat」について代表取締役 小柳次郎さんにお話いただきました。

日時:2021年9月21日(火曜日)19時~21時
場所:コワーキングスペース八王子8Beat(オンライン配信も同時開催)

コワーキングスペース八王子8Beatの小柳と申します。8Beatは7年前にできまして、過去にもこちらでコワーキングスペース運営者勉強会を行ったことがあります。最近であれば、コワーキングスペース運営者勉強会がこのような小さなスペースで行われるのは、珍しいように感じます。これからコワーキングスペースを運営したいと考えている方がいらっしゃれば、参考になる話ができればと思っています。

先日、商工会議所の下部団体である「サイバーシルクロード八王子」という団体からも講演の依頼があり、「コワーキングスペースで生き残るには」ということでお話しました。本日はそれを元にお話していきます。

コワーキングスペース八王子8Beatの紹介

まずは自己紹介をさせていただきます。
私は、千葉県市川市生まれで、大学を卒業後大手のCSKという会社に入社しシステムエンジニアとして働いていました。
1990年代中ごろからビジネスの場でもネットワークが当然になってくるだろうということを見越してアメリカで開発されたネットワークソフトを輸入・ローカル化して売っていこうというクオリティ(旧翻訳会社)に転職し、ローカライズ担当でテクニカルサポートとして勤務しました。
その後1998年に八王子にて知人の会社を継承し、株式会社詩林堂としてソフトウェア開発業に従事して20年以上やっておりました。それで現在に至るという流れです。

次に3D画像でコワーキングスペース八王子8Beatをご紹介します。もしご興味があれば作ってくださった方のご紹介も可能です。こちらは、8Beatのホームページから見ていただくことができます。

今とは少し違いますが、オープンしたばかりの頃の中の様子を見ることができます。ピンをクリックすると部屋の説明が出てくるアプリケーションで個室の中にも入って見ていただくことができます。
上部が空いている個室、上まで閉じている個室もあり、本日は大会議室を兼ねたセミナールームで勉強会を開催しています。小会議室は有料でネット予約できる仕組みになっています。
廊下部分にはカウンター式のエリアを作っています。本格的なコーヒーマシンを置いており、今月末にはテレワークボックスをお試しで設置する予定になっています。その他ロッカーの増設など、お客さまの数や要望に応じて調整をしていっています。

シェアオフィスの仕様としては、1~3名の利用を想定したレンタルオフィス(月貸し)のものが12部屋、2人用2室は天井までの仕切りがあります。貸会議室は16~20名程度の大会議室が1時間4,000円(少人数の場合減額可能)、4名程度の小会議室が1時間1,000円となっています。

コワーキングスペース八王子8Beatのこれまで

「第二世代」のコワーキングスペースです

先日は商工会にて「コワーキングスペースとは何か」という基本からのお話でした。
コワーキングスペースは2010年前後から日本でもオープンし始め、その後いわゆる「コワーキングスペース第二世代」と呼ばれる「自分のオフィスが空いているから半分を貸し出そう」というような形態のコワーキングスペースが生まれました。8Beatもその世代です。それからまたしばらく経つと、今度はしっかりと物件を借りて内装工事をして、という本格的なコワーキングスペースが誕生し始めました。

コワーキングスペース八王子8BeatはCode for Hachiojiの拠点として生まれました

8Beatを作った経緯をお伝えします。八王子市の官民連携団体であるサイバーシルクロードという団体がありました。このサイバーシルクロードは、商工会がバックアップしていて地域の金融機関の創業支援活動の一環として銀行の入っているビルのワンフロアを提供してもらっていました。サイバーシルクロードの中に八王子市内のIT業者が集まっている八王子ITネットワークというグループがあり、私もソフトウェアを作る会社をやっておりIT業者なので入っていました。

八王子ITネットワークでは、当時オープンデータという、行政が蓄積した情報をうまく引き出し、利用可能な状態にして活用し、市民的な付加価値をつけようという活動が行われていました。商売に直接つながらないとしても社会活動としてやっていこうということで、日本では「Code for Japan」という団体がありますが、八王子でも「Code for Hachioji」を作ろうという話をしていました。

その際にサイバーシルクロードのフロアでは使いづらい、Code for Hachiojiで自由に使える場所を作りたいということで、仲間の一人から「コワーキングスペースというものがあるので、それを八王子で作らないか」という提案があり、何人かでテナントを借りて出来上がったのがコワーキングスペース八王子8Beatです。当時からコワーキングスペース協会の現代表理事を務めている星野さんには色々と相談をさせていただき、ご協力があったからこそスタートできました。

当社は元々ソフトウェア開発会社ですが、7年前にコワーキングスペース八王子8Beatを設立した際、コワーキングスペースの管理会社として株式会社共創空間を設立しました。コワーキングスペース八王子8Beatは私一人ではなく八王子ITネットワークの8名で立ち上げました。始めはCode for Hachiojiの活動拠点として作りましたが、多摩地域における地域支援の拠点としてのスペース提供などもしてきました。

創業相談会や各種イベントなどを開催

オープンからこれまでの7年間、何をしてきたのかをご紹介します。

一つはインキュベーションセンターとして、創業相談会や起業塾・補助金の説明会などを行ってきました。
こちらで実際に起業をして法人登記して展開されている会社もいくつかあります。

二つ目はイベントの場として、街ゼミ・各種セミナー・交流会などを行ってきました。コワーキングスペースといえば、何らかのセミナーを行い、人を集めてコミュニティを作っていくというのが一つのパターンだと思います。ただ、最近はコロナでなかなかイベント等の開催ができないという課題はあります。オンラインでされているところもありますがあまり得意ではないので、今日はオンラインを含めたイベントに参加させていただいて良い経験になっています。

珍しいイベントとしては、日本で数名しかいない、漆に彫刻刀で模様を掘り金粉を埋める「沈金」という工芸作家の方のイベントを行いました。他には食べ物系のイベントも多いですね。その他、子供とプログラミングをやるというイベントや、今年はできるかわかりませんが年に1回11月に周年祭というか大きなパーティを行っています。コワーキングスペース八王子8Beatには畳のスペースもあり、冬にはこたつも置いています。そのような、雑多といいますか色々なスペースに色々な方がいて、色々な交流が行われているのが特徴です。

コロナ禍による需要の変化

最近はテレワーク・リモートワークの場としてご利用いただくことが増えています。テレワークは以前から推奨されてきていましたが、コロナ発生以降、政府や都が多くの助成金を出してテレワークを促進していることもあり、オフィスと家の中間的な場所としてコワーキングスペースに来る方が増えました

コワーキングスペースの一つの肝であるコミュニティの形成というのは、イベントを行わないとできていかないと感じています。単なるテレワーク・リモートワークの場では、コミュニティ形成は難しいですね。

コワーキングスペースとして生き残るには

コワーキングスペース八王子8Beatを7年間続けてこられた一つの理由は、小さな資本であるということです。
資本金200万円で創業融資も受けましたが、それで内装まで行いました。内装といっても電源工事とWi-Fi設備をしたくらいで、残りはIKEAで家具を揃えました。大きな設備投資を行わず、売上は月額会費とドロップインの売上でそれ以外はあまりありません。出費は家賃と人件費、光熱費、後は細かい雑費です。とても単純な構造で、これでバランスがとれている間は続けられると思います。ただ、私の給料をここからというのは難しいので、あくまで本業はソフトウェア開発ということです。

ビジネスとしてコワーキングスペースを運営するには、ここからもっと利益を出す必要があり大変だと思います。大手企業が一部門としてコワーキングスペースを立ち上げたもののうまくいかないという話もよく聞きます。コワーキングスペース八王子8Beatは、八王子のコワーキングスペースとしては初期からあり、そのあと何施設かできましたが多くが撤退されています。簡単に言うと、儲からない事業だということかもしれません。

その上、コロナの影響も多くの方が受けたと思います。
昨年4月に緊急事態宣言が発令され、翌月の1カ月間はどうなるかわかりませんでした。八王子の駅ビルも店が閉まって町が閑散としました。コワーキングスペース八王子8Beatとしてはドロップインを休止し、会員様は利用OKとしました。会員様は自分でカギを開けて入っていただき、新規加入希望の方がいらっしゃる時だけ私も来て手続きを行いましたそのあたりから客層が変化し、テレワーク需要の高まりを感じましたWEB会議をする方も増えてきてきましたね。

一方でこのタイミングで参入してきたコワーキングスペースも多いと思います。特に大手が参入されて、八王子ではJR東日本のSTATION SWITCHさんというコワーキングスペースができました。駅ビルのレストランフロアでレストランが廃業・退店した後に、レストランを誘致するのではなくコワーキングスペースになった例もあります。2年ほど前にはイオンモールのOPAができましたがそこにcoin spaceさんが入りました。BIZcomfortさん、不動産屋ネットワークで作っているfabbitさんなども参入してきました。

価格についても調べてみましたが、STATION SWITCHが2時間600円、1日1,200円、coin spaceが30分200円、BIZcomfortが1時間330円、1日1,200円、fabbitが1時間550円1日1,430円となっていました。コワーキングスペース八王子8Beatはドロップインが2時間500円、1日に1,000円です。フルタイムの月額会員が9,800円。他近隣の他社さんと比べると安く、差別化できていると考えています。

いずれにしても、今はコワーキングスペース戦国時代とも言われますが、価格・場所の競争も含め、厳しくなっています。例えばSTATION SWITCHさんはコワーキングスペース八王子8Beat より少し高いですが、駅ビルにあれば便利ですよね。コワーキングスペース八王子8Beatも便利な場所だとは思いますが、駅ナカには敵いません。

コロナ禍でのスペース増床

コワーキングスペース八王子8Beatは今年増床に着手し7月22日にリニューアルオープンしました。リニューアルでは、新たに新規起業家向けの個室12室、貸し会議室を備えたシェアオフィスエリアができました。

今回の増床のきっかけは、コワーキングスペース八王子8Beatの隣のもともとNPO団体が入っていたテナントが、たまたま今年に入って空いたことです。
部屋が空くということが1月半ばにわかったので、入居希望を出し、保証会社の審査でOKとなったのが2月上旬です。3月に契約を締結しましたが、3月はフリーレントでした。個室の利用契約は賃貸借契約と解釈される可能性もあるので、問題にならないように、契約では特約で転貸OKとしてもらいました
内装には見積もりに時間がかかり、値段が高過ぎたこともあって別の会社さんにも見積もりをお願いし、5月の中旬に出てきた見積もりから予算の関係で設計を変更し内装工事を行いました。6月16日に工事を開始し、約1ヶ月で完成、7月22日にオープンしました。契約してからオープンまでは4カ月かかったので、その間収入がなかったこと、現時点でまだ会員様も埋まっていないので厳しい状況であるのは事実です。

なぜコロナなのに増床したのかということですが、増床はコワーキングスペース運営者にとって一つの夢だということがあります。多くの運営者の方はコワーキングエリアから始めて、増床で個室や会議室を増やすパターンだと思います。つまり増床すれば新規の展開ができるということです。

またコロナで新規参入が増え競争が激しくなったことで、従来のコワーキングスペース八王子8Beatのドロップイン+フリーデスク月額会だけのビジネスモデルでは限界が見えてきていました。このエリアの状況から検討して、個室レンタルは需要があればビジネスになるだろうということで増床を決断しました。

今回の増床にあたり1400万円増資しました。内訳は800万円が自前で、600万円は投資していただきました。ざっくりいうと月30万円の粗利を見込んでいます。5年で回収するというモデルを考えていますが、その他の収益事業も同時に検討していきたいと思います。

オープン初期からの利用者も増床エリアの会員に

コワーキングスペース八王子8Beatのオープン当初からの会員さまでシェアオフィスの個室を借りていただいている岩淵さまを紹介したいと思います。それではここからは、岩淵さまにお話しいただきましょう。

私はコワーキングスペース八王子8Beatに出会い、ここで創業してもうすぐ6年になります。
利用を始めたのは、コワーキングスペース八王子8Beatができて約半年後です。それまでは大企業に勤めており、退職後これからどこで仕事をしようかと探していた時に、たまたまコワーキングスペース八王子8Beatを見つけて、仕事をする上では使い勝手が良さそうということでその日に契約しました。コワーキングスペースについてもよくわからない中、利用者としてコワーキングスペースの勉強会にも参加させていただきました。当時は創業していなかったのですが、登記もできるということで、ここで創業しました。

現在は、儲かること儲からないことも含め色々やっています。
自宅で創業すると社会との縁が切れるのが最大のネックだと思います。その点、コワーキングスペースではさまざまなつながりが作れることがメリットでした。当時個室はありませんでしたが、オープンスペースで仕事をしていました。さまざまなイベントだけでなく、創業や補助金の相談もでき、大きな助けになりました。イベントも儲かるかは別として自分のやりたいことができますし、そのような存在意義を確認できる場に出会えたのは、本当に良かったと思っています。

私は元々IT系なので、本業はWordPressの開発やEC系の開発もやっていますが、今一番ビジネスになっているのはAIのコンサルティングです。それ以外にも地域のアプリを作ったり、ハンドメイドを海外に売りましょうというプラットフォームをやったりしてきました。カナダ系のECサイト作りのお手伝いなどもしています。

コワーキングスペース八王子8Beatに個室ができたのはコロナになってからですが、コロナになって大きくて働き方が変わった実感があります。オンラインでの会議ややり取りが増え、個室が必要だなと感じるようになりました。個室ができる前はオンライン会議では外に出ることもあったので、個室ができて真っ先に契約させていただきました。

緊急事態宣言の際は、私はここにきて自分で鍵を開けて自分で郵便を受けていました。コワーキングスペース八王子8Beatにいると郵便をスタッフさんが受けとってくれるのがとても便利です。現在はさまざまな形態のコワーキングスペースがありますが、コワーキングスペース八王子8Beatはとても私に合っていると思っています。増床の際には出資もさせていただきました。そのような昔ながらの資本参加ができることも小規模運営のメリットではないかと思います。私は八王子に住んでいるわけではありませんが、コワーキングスペース八王子8Beatを拠点に、知り合った方も多く、参加しているコミュニティもたくさんあります。ここを拠点に社会とかかわりながら、これからも色々なことをしていきたいと思います。


この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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