イベント・勉強会レポート

「SoloTime 新宿」を運営する東京電力ホールディングス株式会社のビジネスソリューション・カンパニー ソリューション推進室の佐藤和之さん、諸川まりさんにお話いただきました(第84回コワーキングスペース運営者勉強会®)


法人向けの郊外型テレワークオフィス「SoloTime 新宿」を運営する東京電力ホールディングス株式会社のビジネスソリューション・カンパニー ソリューション推進室の佐藤和之さん、諸川まりさんにお話いただきました。

日時:2022年2月17日(木曜日)19時~21時
場所:SoloTime 新宿(オンライン開催)

人事としての問題意識を生かし立ち上げた「SoloTime」

東京電力ホールディングスの佐藤と申します。よろしくお願いいたします。私は東京電力ホールディングスで「SoloTime」を立ち上げました。SoloTime立ち上げの経緯から今後についてご説明させていただきます。

「SoloTime」は電気とガスのインフラ企業である東京電力が提供するサービスです。
私は人事出身なのですが、社内の働き方改革の推進や自分自身が子育て中に感じた通勤ストレスを解消するための取り組みをしたいと考えており、この事業を立ち上げました。

「SoloTime」の特徴

「SoloTime」は、「無人の法人専用のテレワークオフィス」です。基本的には関東の郊外に出店しています。東京電力は関東での基盤がありますので、関東への地域貢献をしていきたいと考えてスタートしました。

具体的な特徴としては、まず首都圏郊外の駅から徒歩3分以内に展開している点です。私自身が色々なシェアオフィスを渡り歩いて仕事をしてきた経験から「駅から近くないと、あえて行かない」と感じ、駅から徒歩3分以内に出店しようということを決めました。

特徴のもう一つは、「快適なソロワークスペース」です。
ソロの仕事は、会社員では6割から7割ほどあると言われています。ソロの仕事をするときは一人でしっかりと集中できる空間が必要で、そのためのスペースを提供することを意図して作っています。
在宅勤務だとよくあるパターンとして、小さい子供がウェブ会議に入ってきてしまう、家族に話しかけられるなど、自宅だとなかなか仕事に集中できないと感じている方は少なくないのではないでしょうか。マンション生活の方などは特にそういったストレスを抱えている方が多いと思います。そのような方に使っていただけて、しかも長時間かけて都心まで行かなくてよい、家の近くにあるソロワークスペースが「SoloTime」です。

三つ目の特徴は、女性目線で作られた内装です。
写真でも分かる通り、白を基調とした個室やブースが多いです。私の部下はほとんどが女性なこともあり、彼女たちの意見を重視しました。

さらに、土日祝日も営業しているという特徴もあります。法人向けシェアオフィスというのは、どちらかと言えば働き方改革の流れもあり土日祝日や夜間は営業していないところが多かったのです。しかし私達がこの事業を始める前に1万人のアンケートを行ったり100社以上の企業にヒアリングを行ったりしたときに「土日に3時間だけの仕事をするためだけに通勤に3時間もかけるのはかわいそうだ」という声がありました。それもあり、本当の働き方改革は「いつでも働けていつでも休める」という状況の方がよいということで、土日祝日・夜間の営業をしています。

また、セキュリティへの配慮も特徴です。個室環境の音漏れには非常に気を付けていますし、Wi-Fiなど極力セキュリティが強固なものを取り入れています。そして警備は全てセコムさんに入っていただき、何か起こったらすぐに駆けつけていただく体制を整えています。

そして、お客様にご好評いただいているのはフリードリンクやお菓子をご用意している点です。
自分自身がワークスペースを使っていたとき、飲み物が用意されている施設とそうでない施設を比べると、どうしても飲み物がある施設に足が向いていました。100社以上の企業にヒアリングを行ったのですが、飲み物ぐらいサービス提供してほしいという声がありました。
お菓子についても、自分自身がワークスペースを使っていたときは、お菓子が置いてある方がテンションが上がったり、忙しくてランチができないときなどはお菓子でお腹を満たしたりということがあったため、これはサービス提供したいということになり、開始しました。

また、法人向けワークスペースは予約しないと入退館できない仕組みの施設があります。しかしお客様から「すぐに入りやすい仕組みにしてほしい、プラス、予約でいざというときに席を確保できるような仕組みにしてほしい」という声がありました。そこで「SoloTime」はQRコードでいつでも入室することができ、個室については予約が必要という形をとっています。

連携施設を含め150店舗という拠点の多さと、初期費用無料で1時間770円という料金体系

「SoloTime」には現在250社以上約10万人の会員様がいます。ホームページにもある「店舗ロケーション」の図のブルーでマークした部分が「SoloTime」の店舗で、現在27店舗あります。薄いグレーのマークは、野村不動産さんのH1Tさんと提携をしている部分で、これを含めると現在150店舗あります。
SoloTime 店舗ロケーション

我々の会員様は野村不動産さんの施設も使えますし、野村不動産さんの会員様は我々の施設も使えるようになっており、システムのAPI連携をすることで相互で使える仕組みをとっています。この点もお客様には「たくさん拠点が増えた」と評価されており、良かったと思っています。

料金体系については、入会金や初期費用はかからない仕組みです。法人の会員様が使ったときの1時間の料金は税込770円で、複合機等利用の際や会議室利用には別途料金がかかるという仕組みにしています。
その他ロッカーを用意していますが、法人企業でロッカーを契約するお客様はほとんどいません。また複合機もあまり使われておらず、基本的にはパソコンを持ってきて仕事をしている方がほとんどです。また、個室利用時は別途予約(プラス100円~500円)という形をとっており、この金額の差は基本的には個室のサイズによるものです。このような料金体系で法人企業様に契約・会員登録をいただき、その企業の会員様が施設を使えるという仕組みです。

事業立ち上げから現在までの推移

スペース内の改修

2019年3月に最初の店舗として八王子店をオープンし、それから現在まで27店舗に広がりました。
コロナ禍では休業を余儀なくされ一時営業を停止しましたが、営業再開時に大きく、また劇的に変わったことがあります。
それは、個室を使うお客様がかなり増えたという点です。これは法人企業だけではなく一般的なことかもしませんが、セキュリティ面を考慮してオープンスペースでのウェブ会議を制限している企業様もあれば、他のウェブ会議の音を気にして個室を使われる方もいらっしゃいます。テレキューブなどのボックスのような形を望まれたりするお客様も多く、ニーズに合わせて個室改修を行ってきました。例えば三鷹店では、改修前はブースなども設置したラウンジのようにしたかったのですが、この点はコロナ後のお客様のニーズに合わなくなったため、ブース席やソファー席を改修して個室にしました。

営業時間の変更

次に、営業時間の延長です。
当初は基本的に8時から21時までの営業からスタートしました。建物のルールに合わせてやってきたのですが、会員さんからもっと長くしてほしいという要望があったため、現在はできる限り長めにということで、7時から24時までオープンする仕組みにしています。実際に使われるのだろうかと思っていたのですが、一番最初に24時までのオープンにした武蔵小杉店はいまだに23時以降もご利用されるお客様がいらっしゃいます。

キャンセル待ち機能の導入

また、キャンセル待ち機能も導入しました。
「SoloTime」では1カ月前から予約などが可能で、いつでもキャンセルできるようにはしていますが、1カ月前から予約する会社が結構多いです。そのため前日や2~3日前に予約しようとしてもなかなかできず、ご意見をいただくこともありました。しかし、直前にキャンセルされるお客様も一定数いらっしゃるので、そこをなんとか使いたい方に使っていただけるようにするためキャンセル待ち機能を導入。キャンセルが入った時に通知を行う仕組みに切り替えました

サービスの拡充

さらにサービスの充実も行っております。
以前は自販機でのコーヒー提供でしたが、なるべく美味しいコーヒーにしてほしいという要望があったので、本格的なコーヒーマシンを導入したり、全店舗ではなく5、6店舗ではありますが、冷凍庫を設置してアイスや冷凍のパスタなどの冷凍食品を無料で提供したりしています。これがかなりお客様に喜ばれており、冷凍庫が空になると「空ですよ」とお客様より連絡が入ることもあります。

その他にも月に何回か、高級パフェを提供したり、無印良品さんのお菓子を1週間無料で食べられるキャンペーンを実施したりして、お客様に喜んでいただいています。次回は何をやろうとか、自分達のおすすめの食べ物を置いてみて反応を見たりとか、我々自身が楽しんでやらせていただいています。

一つ言えるのは、こういったことを行うと施設の認知が広がります。実際キャンペーンを実施すると、今まで「SoloTime」を利用したことがないという方のご利用が必ずあります。会員様の中でも利用したことがない方、他の施設を使っている方、こういったテレワークオフィスを初めて使うという方への周知にもなり、その後も利用していただけるという良い効果が得られています。

アンケートから利用者のニーズや利用状況を把握

以前「SoloTime」に関してのアンケートを行ったので、その内容をご紹介します。

一つ目の「どんな時に利用しますか」という質問には「自宅以外で業務をしたい時」という答えが多かったです。我々の出店場所は基本的には新宿と池袋以外は山手線沿線外なので、家の近くで利用されている方が多く「自宅以外で業務をしたいけど会社まで行きたくない」という方が使われていることが多いです。

二つ目の「1回あたりの滞在時間はどのくらいですか」という質問には、実は「終日」が最も多く、結構長い方ではないかと思っています。次に「5〜6時間」が21%、「3~4時間」が28%と続きます。最近のデータではないのですが、「ちょい使い」の方から「終日使い」の方まで全ての方の平均が6時間近かったので、自分達もびっくりしたということがありました。これはおそらく郊外のテレワークオフィスであることの特徴かと考えています。

三つ目の「通勤時間は変わりましたか」という質問は、当然ですが「減った」という方が多かったです。自分自身が育児をしていた時に通勤時間をなんとか減らしたかったので、私がやりたかったことが実現できたのかなと思っています。

四つ目の「業務時間内の移動時間」については「減った」と答えてくださいました。

五つ目の「どんな点が気に入っていますか」という質問には、当然一番は「自宅の近く」という答えでしたが、二番目は「仕事しやすい設備」でした。設備について満足しているという声はいまだにアンケートなどで評価をいただいています。三番目は「ドリンクやお菓子が充実している」という点で、事務局としても「お客様に何で楽しんでもらいたいか」という視点でいつも考えています。あるアンケートでいただきとても嬉しかったお声は「無人運営だけど温かみを感じました」というお声です。いただいた時は本当に嬉しく、皆で共有しました。

「SoloTime」の稼働状況については特徴的で、例えば大井町と藤沢の店舗は、昨日の時点で本日の予約席はほとんど満席状態です。朝から夕方以降までずっと埋まっているというのが今の実態です。

店舗展開地域の拡大へ

2019年3月に一店舗目の八王子店を開始し、現在27店舗ですが、今後の展開として今私達が考えていることをお話しします。
現在は法人向けで郊外型のテレワークオフィスということで、ターゲットも決まっており場所も郊外と基本的に明確にしていますが、現在の27店舗では、まだ少ないというお声をお客様からいただいています。予定としては2022年度に13店舗出店し、まずは40店舗を目指したいと思います。

法人向けとした一つの大きな理由は、先ほど申し上げました通り無人運営のため、色々なリスクを考えて法人をターゲットとして選んでいます。
しかし「個人で契約したい」というお声は常日頃からいただいているので、やはり個人向けもやっていかなければならないと思っています。そして企業様によっては「従量課金制で固定費を支払わなくてよい仕組みについては満足だけど、例えば郊外に小さな拠点を一つずつ持ちたいので部屋を2個ずつ貸してほしい」といったような声もあります。現在は実現できていませんが、そういったお声にお応えするには、サービスオフィスやレンタルオフィスのような事業も展開していく必要性があるかなと考えています。ターゲットの話では、例えば従量課金制から場所貸しへという話もあります。

また、展開地域についても「関東に制限するのか」という点があります。まずは関東へ貢献したいという思いがありましたが、今後はワーケーションのように地方に行くことでその地域に貢献するということもあるので、今後は全国展開を視野に入れていきたいです。働き方改革を実現するために、様々な働き方をサポートしていき、どこでも働けるような仕組みの実現に寄与していきたいと考えており、検討しているところです。

最近、ヤフーさんがどこでもオフィスという人事制度の拡充を発表しました。私も「ついにこういう時代がきたのか」と思いました。また、おそらく今後IT企業を中心にどこでも住んで働けるという仕組みが拡充されるのではないかと思っています。

ワーケーションの市場も非常に伸びており、2025年度は予測では急激に伸びるだろうというデータもあります。実際に単発のワーケーションでどこまでニーズがあり本当の意味での地域貢献になるかどうかというのは疑心暗鬼な部分があり、関係人口を創出するためにはリピーターを生み出すことが必要だと考えています。
我々は5~6名でこの一年半ぐらいに様々なタイプのワーケーションを自分達でやってみました。一般的に言われているのは、休暇活用型や日常埋め込み型、ブレジャーつまり出張型、またオフサイトミーティングのようなパターンなどです。私や部下、またそれぞれの家族に少し協力してもらい、金沢で今後の事業をどうしていくかということを缶詰のように合宿を行ったり、北海道の出張の際足を伸ばして知床で自然を楽しんだり、逗子に家族で行って、休日は楽しんで平日はコワーキングスペースで仕事をしたりといろいろと体験してきました。

この一年半ぐらいのワーケーション体験と様々な方に聞いた結果、地方で働く時には働くスペースがどうしても重要だということがわかりました。ですから基本的には都心と同じように働ける場所が必要で、それができる設備が個人利用でも法人利用でも必要だと思います。

また、ワーケーションや地方に単なる旅行で少しだけ行くのではなく、長期間になった時に、子供をどうするのかという点も課題の一つです。そういった意味で託児できるような場所が必要だと思いますし、それだけではなく子供に地域の良さを学ばせるアクティビティ経験も必要ですし、教育も大事です。そういったものがないと地方への拡充や地方での働きやすさは実現できないのではないかと思っています。

地域へのUターン、Iターン促進への貢献

今後取り組んでいきたいことの一つとして、副業・兼業にもフォーカスしていきたいと考えています。地方創生・ワーケーションという意味では、SoloTime会員が10万人ぐらいと増えてきたので、色々な自治体のコワーキング事業者様などと手を組みながら、地方への移住促進に少しでも寄与したいと思っています。

また、移住移住と言っても、移住先について、故郷がない人はどうやって決めるのかという問題があります。私達は、まず故郷がある人がUターンできるような環境、Uターンしたときに働きやすい環境を作るのが重要かなと思っており、その取り組みとして色々な地方自治体の方々やコワーキング関係の方々と意見交換などを進めています。

私達としては、ワーケーションという点では、バケーションメインではなくワークがしっかりできてどこでも働ける設備をつくることで地域に貢献していきたいと考えています。意見交換する中で我々ができることとして出てきたことなのですが、「SoloTime」のホームページに地域情報を掲載することで、例えば「自分の故郷に実は働けるスペースが色々ある」などの情報を会員様に発信していき、Uターンから最終的にはIターン、つまり移住の促進に貢献していきたいと考えています。

今後は法人向けに限らず、個人向けサービスも展開していく予定なので、意見交換などぜひお気軽にお問い合わせください。今後ともどうぞよろしくお願いします。


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