コラム

「コロナショックを迎えてしまった東京で、コワーキングスペースに求められること」 東京都認定創業支援施設 DIGIMA BASEコミュニティマネージャーの小林元さん(前編)(第66回コワーキングスペース運営者勉強会®)


新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、全国に発令された緊急事態宣言。「稼ぐ東京」を目指し2030年の開業率12%を目標としてきた東京都でも、多くの企業・事業者が事業存続のため、試行錯誤を重ね経営を続けています。

そのような中で、コワーキングスペースやシェアオフィス、インキュベーション施設を運営するマネージャーなどの支援者には何が求められるのでしょうか。

創業支援・海外進出支援を担うコワーキングスペースDIGIMA BASE(デジマベース)のコミュニティマネージャーを務める小林元さんにお話をいただきました。

日時:2020年4月30日(木)18:00~20:00
場所:オンライン開催


DIGIMA BASEの小林元さん
DIGIMA BASEの小林元さん(右)
(過去のコワーキングスペース運営者勉強会の様子)

コロナ禍で、我々のような創業支援施設は何ができるか、何をやるべきなのか

DIGIMA BASEコミュニティマネージャーの小林元と申します。よろしくお願いします。

DIGIMA BASEは新宿区の市ヶ谷にありまして、コロナ騒動の前は海外ビジネスに特化したコワーキングスペースとして、日本から海外に進出する企業様に重点を置いたサービスを展開してきました。また、2019年11月に東京都のインキュベーション施設の認定を受けることができ、創業支援にも特化したコワーキングスペースとなっています。

DIGIMA BASEの内観
DIGIMA BASEの内観

本日の勉強会開催の経緯として、東京都のインキュベーション施設向けに同様のコンテンツでミーティングを行ったということがあります。そのテーマが、「このコロナ禍で、我々のような創業支援施設は何ができるか、何をやるべきなのか」ということです。本日はそれをベースに、民間の企業が運営するコワーキングスペース・創業支援施設・シェアオフィス向けに、情報発信をさせていただきます。

助成金・資金繰りに関する相談窓口の設置

DIGIMA BASEというコワーキングスペースは、税理士法人ケーエフエスという私が所属するKFSグループと、RESORZ(リソーズ)の2社で共同運営しています。RESORZ(リソーズ)というのは、海外ビジネスに特化した情報やネットワークを提供する企業です。

このコロナ禍で、DIGIMA BASEでは、最も需要・緊急度共に高いものであると考え、税理士法人ケーエフエスで「コロナ救済プロジェクト」という国の助成金の活用や資金繰りのご相談を受ける窓口を開設しました。そして、RESORZに協力してもらう形で会員様向けに情報発信を開始しました。

相談者にDIGIMA BASEの会員を紹介 各ポジションの連携サイクルを

ご相談内容は主に、助成金の活用についてです。それに対して現状をヒアリングして、今やるべきことは何かを整理してお話します。

ここでポイントなのが、問題・課題に対する具体的なソリューションを、我々運営が直接行うのではなくDIGIMA BASEの会員様で該当するソリューションを持っている方をご紹介しているということです。そうすることで、運営会社のRESORZと税理士法人ケイエフエス、そして会員様という三者をつないだサイクルを作り出すことができるというわけです。

これはコロナ禍がきっかけではあるのですが、実は私の元々やりたかったことでもあります。
コワーキングスペースを利用する一番の肝となるメリットは、そこで生まれるネットワークや発生する案件を実際に会員が受け、コワーキングスペースの利用料金以上の利益を獲得してもらうことだと思っています。この運営・会員共に利益となるサイクルをこのタイミングでスタートしました。これが、我々のコロナ禍に対する活動の中で、一番注力したものです。

コロナ渦で大事なこと「まずは資金を調達する」

既に述べた通り、相談者からは助成金について知りたいという声が多いのですが、実はそれよりもやらなければならないことがあります。
今最も活用すべきものは、政策金融公庫の融資です。これが非常にいい条件なので、まずはそれを利用し借入することをおすすめしています。

DIGIMA BASEの会員様の中に融資の専門家や行政書士法人様がいらっしゃるので、その方々からも情報収集を行いました。その中ではっきり言われたことは、「まず今やるべきことは、お金があってもなくても、まずは借りる。そしてしっかりと手元資金を確保した上で、補助金や助成金の活用を検討する」ということです。補助金や助成金に関する国からの政策がスタートしたのは3月11日ですが、実質的には活用が難しいものばかりでした。

それから4月中旬~末にかけて、やっと現実的な政策が出てきました。それが経済産業省の「新型コロナ感染症対策関連」というサイトに記載されている支援策です。ここに全ての国の政策が掲載されています。
まずこのサイトをご紹介して、その中からどれを活用できるかという具体的なお話をします。
活用できそうなものをピックアップしたら、我々が直接支援できるサービスの説明をしつつ、より専門的な部分に関してはDIGIMA BASEの会員様の融資や行政書士など専門の方を紹介しています。

事業者の「本質的な課題」を支援する踏み込んだサポートを

補助金や助成金、融資などのお金にまつわるもの以外の相談としては、個人でエンジニアをやっていて案件が取れなくて困っている、オリンピック関連の事業をやっていたがそれが全部無くなってしまってどうしたらいいかわからない、海外からコーヒー豆を仕入れようとしていたが仕入れ先の国がロックダウンになって商品が入ってこなくて困っている、などがあります。

他にも、最も印象的だったのは大阪で革製品を扱っている小売業の方の相談です。「テナントの入ってるビル内で感染者が出てしまい社員を出勤させられなくなってしまった。注文は増えており売上の見込みはあるが、人がいないので出荷ができない。その結果売りを立てることができない。<会社を存続させるための売上><従業員の健康と安全と収入>を天秤にかけて判断することができない」というお話でした。

このように相談内容も多岐に渡り、たくさんの事業者様からご相談いただく中で感じたのは、「お金の問題があると大切なことが考えられない」というです。確かにお金に関することも切実な問題ではありますが、融資・補助金・助成金の検討の<やるべきこと>が一通り終わり、お金まわりの問題がクリアになって初めて、本質的な課題が見え着手できるようになるのだと思います。

そのような本質的な課題を解決するために、コワーキングスペースやインキュベーション施設は、もう一歩踏み込んだ支援やサービスを提供していかなければならないと思います。

キンコーズ・ジャパン「ツクル・ワーク」の石川愛さん作のグラフィックレコーディング
キンコーズ・ジャパン「ツクル・ワーク」の石川愛さん作のグラフィックレコーディング

コワーキングスペースの利用者制限について

実はDIGIMA BASEが入っているビルの別のテナントでも4月3日に感染者が出てしまい、それ以降DIGIMA BASEも会員様を呼べない状況になってしまいました。これは緊急事態宣言が出る前の話です。
緊急事態宣言が出て以降、他のコワーキングスペース運営者の方々がとった対応はさまざまだと思いますが、DIGIMA BASEはその前から施設を基本的には閉めざるを得ない、営業制限をかけざるを得ない状況でした。

また、緊急事態宣言が出された後は、DIGIMA BASEは利用制限を行い月額会員様しか使えないようにしています。そして、今回の勉強会や先ほどご紹介した相談窓口のような他の活動をどんどん行っているというわけです。

(※6月1日以降、現在は通常営業を再開しています)

コワーキングスペースに人を呼べない今、やるべきこととは

前出の大阪の革製品企業様に、DIGIMA BASEの現状と共に、私が感じていることを正直にお伝えした内容をご紹介します。

私の地元は福島県の郡山市というところで、東日本大震災を真っ只中で経験しました。現在、日々状況は変わりつつありますが、コロナの影響は震災の時とほぼ同じようなことが起きています。

当時私は飲食店で働いていたのですが、大阪の企業様と同じような状況でした。放射能の問題があるし、お客さんもいつ来るかわからない。それでもインフラが大丈夫だったので、やろうと思えば店は営業できました。ただ、お客さんが来るかわからない状況の中、従業員を出勤させることができなかったんです。
私は店長として従業員に「いつ復帰させられるかわからないが、必ず元通りにする。それまでは社員だけで頑張るけど、必ず呼び戻すからそれまで待っていてほしい」という話をしました。
結果、3週間くらい経つとある程度お客さんが入ってきて、震災景気が始まった頃に従業員の皆さんを呼び戻して通常のシフトに戻すことができました。9割の人が戻ってきてくれて、平常通り営業ができるようになりました。1割くらいは避難など色々な事情で戻ってこられない人もいましたが、ほとんどの人が戻ってきました。

大阪の社長さんには、「〇〇さんが思っていることをスタッフさんに伝えていますか?私は正直に気持ちを伝えることで、このような経験をしました。ぜひ参考にしてください」というお話をしました。

このように一つ一つの相談に対して、少しでも役に立つ情報をお伝えすることが、今DIGIMA BASEができる一番の「誰かのためになること」と思って進めています。

コワーキングスペースはオフラインのビジネスなので、今はそこに人を呼ぶことができない。となると、やるべきことはソフトの部分やオンラインセミナーでの「その人に必要な情報提供」しかないんですよね。我々はとにかく「誰かためになる情報発信」をしており、本日の勉強会もその一つです。

DIGIMA BASEでの過去のイベントの様子
DIGIMA BASEで開催された過去のイベントの様子

世界をつないだ情報発信も

他に今やっている情報発信として、「THE WORLD ON LOCKDOWN(ザワールドオンロックダウン)」のタイトルで「我々が今やるべきこと」というオンラインセミナーを開催しています。このセミナーでは、DIGIMA BASEの世界各国のパートナー企業にご協力いただいていろんな国の情報を生で発信しています。

1回目は、ベトナム・シンガポール・フィリピンをつないで、現地にいる日本人の方に情報を伝えてもらいました。これらの国は日本よりも先にコロナが蔓延し、都市封鎖をして対策をとっています。その現状を知ることで今後日本で起こり得ること、発生する問題を考えるきっかけができます。
今後の見通しが立たない、先がどうなるかさっぱりわからない状況に対して、多少なりともヒントとなる情報を提供したいという思いで開催しました。

セミナーの参加費は2,000円で一週間くらいの告知期間でしたが、50名が集まりご好評いただきました。中国の北京と深セン、中華圏として台湾をつなぐセミナーや、ヨーロッパ三カ国位をつないだセミナーも行う予定です。このセミナーは、今DIGIMA BASEができることであり、必要とされることだと考えています。セミナーを通じて今後も情報を発信していきます。


後編では、コロナ渦でのコワーキングスペースにおける新規会員獲得に必要な視点や、今後求められるコワーキングスペースの評価軸についてご紹介いただきます。
『コロナショックを迎えてしまった東京で、コワーキングスペースに求められること」』東京都認定創業支援施設 DIGIMA BASEコミュニティマネージャーの小林元さん(後編)(第66回コワーキングスペース運営者勉強会®)」へ続く。


この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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