コラム

「コロナショックを迎えてしまった東京で、コワーキングスペースに求められること」 東京都認定創業支援施設 DIGIMA BASEコミュニティマネージャーの小林元さん(後編)(第66回コワーキングスペース運営者勉強会®)


新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、全国に発令された緊急事態宣言。「稼ぐ東京」を目指し2030年の開業率12%を目標としてきた東京都でも、多くの企業・事業者が事業存続のため、試行錯誤を重ね経営を続けています。

そのような中で、コワーキングスペースやシェアオフィス、インキュベーション施設を運営するマネージャーなどの支援者には何が求められるのでしょうか。

創業支援・海外進出支援を担うコワーキングスペースDIGIMA BASE(デジマベース)のコミュニティマネージャーを務める小林元さんにお話をいただきました。

※この記事の前編はこちら
『コロナショックを迎えてしまった東京で、コワーキングスペースに求められること」』東京都認定創業支援施設 DIGIMA BASEコミュニティマネージャーの小林元さん(前編)(第66回コワーキングスペース運営者勉強会®)

日時:2020年4月30日(木)18:00~20:00
場所:オンライン開催


DIGIMA BASEの小林元さん
DIGIMA BASEの小林元さん(右)
(過去のコワーキングスペース運営者勉強会の様子)

今一番おすすめの補助金・助成金
小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)

情報として、今一番おすすめの補助金・助成金をお伝えします。経済産業省のサイトにもありますが、小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)が、4月末に出されました(参考:経済産業省ミラサポplus 小規模事業者持続化補助金[コロナ特別対応型])。

※5月22日現在、こちらの補助金の1次申請期間の締め切りは過ぎています。最新の情報はホームページをご確認ください。

これは、該当する規模で運営されているコワーキングスペースであれば活用できるものです。例えば、オンラインセミナーを強化したい、情報発信などのためにオンラインのシステムを使いたいということにも、おそらく適応されるものになっています。
スケジュールがタイトなので、興味がある方はすぐに動いた方がいいと思います。我々もこれを申請して、オンラインセミナーを更に強化しようと考えています。

※5月22日現在、こちらの補助金の1次申請期間の締め切りは過ぎています。今後のスケジュールは
3次締切: 8月7日(金)必着 
4次締切:10月2日(金)必着

最新の情報はホームページをご確認ください。

この情報は、各コワーキングスペースに登録されている会員様にもぜひ伝えてください。補助金・助成金なので使った費用に対して後に支給されるものではありますが、小規模事業者であれば使うことができます。やっと出てきた、現実的に活用しやすい助成金です。

コロナ渦での新規コワーキングスペース会員 新たな需要に目を向けて発信する

DIGIMA BASEの会員様でもあり、お世話になっているHub Spaces(ハブスペ)という、コワーキングスペースの紹介サイトさんから、SEOの視点で今のニーズに関する情報を教えていただきました。

今はどのコワーキングスペースでも、新規会員を獲得できないと困っていると思います。また、現会員様の離脱も発生しているかもしれません。
離脱を防ぐためには、情報発信など会員とできるだけ関りを持つということが必要です。新規会員の獲得に関しては諦めているところも多いと思いますが、今のこの状況でも新規を取るチャンスはあることを教えてもらいました。

それは、オフィスの借り換え需要です。具体的には、今プライベートオフィスを借りている企業では、テレワークの広がり・実践を経験し、大きなオフィスは必要なくなったというケースも出てきています。そういう企業の従業員が新しく働く場所として、コワーキングスペースやシェアオフィスの需要があるということです。

他にも、感染リスクヘッジのために自社を分散化しようと、例えば100名の従業員がいたら30名を別のところに移し、万が一感染者が出ても稼働できる状況を作ろうとするケースがあります。
実際にDIGIMA BASEでも、誰もが名前を知っているような大企業様からの問い合わせもあありました。

また、元々コワーキングスペースやシェアオフィスを利用していたが、値段が安いところに移動したいという方もいます。新規会員の獲得に困っているのであれば、このあたりを狙いに行くのも一つの手です。このようにやり方次第でコロナ禍でもかなり可能性はあると思います。

DIGIMA BASEでの作業風景
DIGIMA BASEでの作業風景

DIGIMA BASE としても、このような需要に注目して情報発信をしています。Hub Spaces(ハブスペ)が気になる方がいればご紹介しますし、私の知っている情報も個別で対応しますので新規獲得で困っていらっしゃる方がいれば、DIGIMA BASEまでお問い合わせください。

他の施設運営者と情報交換をすることで、そこから次の発想が生まれることもあると思います。
「それぞれのコワーキングスペースが今年2月~4月にかけてどのように変化してきたか?」
「会員は減ったのか?それとも増えたのか?」
「今どのように営業をしているか?今後どのような対策をとろうと思っているのか?」
など現状をコワーキングスペースの運営者同士で共有することが、具体的な行動を決めるきっかけになると思います。

コロナ渦で、コワーキングスペースの運営はどうするべきか

最後に、どうしても伝えたいことが二つあります。

一つ目は、「コロナの中での営業を続けるかどうか?

これは、管理の問題やリスクもあるので強制はできませんが、私は営業をやめません。なぜかというと、コロナが終息した後、必ずコワーキングスペースの需要が来ると思っているからです。オフラインがつぶれているコロナ渦中では、何らかのオフラインに対しての欲求が溜まってきています。外出解禁・営業再開されたら、溜まっていた欲求ストックが解放されるはずです。

このことは震災の時に経験しています。震災の時は、オフラインもつぶれて、尚且つ食も乏しかった。その中で周りの飲食店が閉めている時に、私の店はずっと営業をしていたんです。その結果少しずつ口コミが広がっていってお客さんが集まり震災景気を享受することができました。

震災の経験から考えると、今営業しているところと営業していないところでは、この後の明暗が分かれます。コロナ収束後景気を受けられるか否か。
ワークスペースが使えない状況だとしても、情報提供など何かしらの発信をしていくことが大切です。「うちは動いてますよ」「頑張ってますよ」というアピールをし続けていくことをおすすめします。

コワーキングスペースの評価軸「QSC+P」 

二つ目に、自社のコワーキングスペースがどのように評価されているか、強みは何かを理解するということです。

飲食店には、QSCという評価軸があります。Qがクオリティ(品質)SがサービスCがクレンリネス(清潔感)の略です。
人は無意識のうちに、「QSCのうち、どれがどれだけ高いから好き。低いからもう行かない」というような思考を働かせています。

例えば吉野家の場合、安くて美味しいというQ(品質)を求めて行くわけです。S(サービス)はあまり問われない。
一方高級レストランの場合、Q(品質)が高いことはもちろんですが、S(サービス)がよく、C(清潔感)も整っていて欲しい、と思ってしまう。
というように店ごとにQSC評価をしているのです。

キンコーズ・ジャパン「ツクル・ワーク」の石川愛さん作のグラフィックレコーディング
キンコーズ・ジャパン「ツクル・ワーク」の石川愛さん作のグラフィックレコーディング

これをコワーキングスペースに置き換えて考えてみてください。DIGIMA BASEの場合は正直、個室も少なく設備投資もあまりできていないのでQ(品質)はあまり高くありません。これを上げることは難しいですよね。
では何ができるか?と考えた時に、DIGIMA BASEの場合はサービスだったんですよ。他のコワーキングスペースではやらないことをやろう!ということで、できる限り個別に対応する・要望には応えるなど、サービスを上げてきました。

DIGIMA BASE ではC(清潔感)も大切にしています。なぜかというと、Q(品質)とS(サービス)に比べると一番自分でコントロールできる部分だからです。掃除はすればきれいになるんです。簡単にできるにもかかわらず、後回しになってしまう傾向があります。Cはやればやった分評価を高めることにつながるので、ぜひ実践していただきたいと思います。

そしてQSCに加えてもう一つ、コワーキングスペースならではの評価軸として考えついたのが「P(パーソン・人)」です。

サービスやコンテンツを作って特徴を出したとしても、コワーキングスペースは結局箱でしかありません。そこに我々がもっているもの以上の付加価値を出してくれるものといえば、コワーキングスペースの会員さんなんです。
働いているスタッフの能力も含めての「P(パーソン・人)」ですが、大部分は会員に依存します。「数(会員数)・幅(業種のバリエーション)・質(個人の人柄や実績)」です。ここを意識的に強化・調整していくことで、自分たちだけではできないことが提供できるようになり、付加価値が上がり、施設としての評価も高まると考えています。

DIGIMA BASEの利用者の様子

自粛期間は、色々なことを考える時間が取れるはずです。ぜひ自社のコワーキングスペースが「QSC+P」のどこが高くてどこが低いのかを考えてみてください。そして、低いところは改善し、高いところは更にブラッシュアップしてみてください。

コロナ渦・アフターコロナの世の中で求められるC(清潔感)

QSCの「C(清潔感)」に話が戻りますが、特にコロナ渦やアフターコロナの世の中ではC(清潔感)が重要な評価軸になると考えています。業種を問わずしっかりとC(清潔感)が保たれているかどうかは、店選びをする上でこれから重視されるはずです。
「除菌をきちんと行っていて安全ですよ!」というマークや認定があれば人が入る、なければ入らない!みたいな社会が来るのではないかと思っています。

私は個人的にJCU(ジャパンクリーンユニット)というプロジェクトを動かしています。良質で信頼のおける清掃業者さんとのつながりを作ったり、本当に効果のある除菌アイテムの情報集めをしています。コワーキングスペースをはじめ、すべての店舗事業者に向け<Cの優先順位と衛生基準の向上>を目的とした活動です。

JCUに興味のある方はDIGIMA BASEまでお問合せ下さい。DIGIMA BASEでは会員様つながりで信頼できる清掃業者さんを紹介してもらいました。清掃・除菌にかかる費用は夜間にしっかりと作業を行って100坪20万円程度です。
注目すべきは、東京都がこれに補助対象と認めてくれたため、3分の2が補助されることです。おそらくコロナ対策向けの助成金でも、店舗活動を再開する業者向けの清掃・環境維持活動を認めるものもあると思います。助成金や予算があれば、ここに割くことも計画してみて下さい。

以上、コロナ渦でコワーキングスペース・創業支援施設・シェアオフィスがやるべきこと、補助金・助成金について、DIGIMA BASEでの具体的な取り組みについてご紹介させていただきました。

ありがとうございました。


この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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