コラム

「赤羽のコワーキングスペース アカコ」について、インキュベーションマネージャー 小林祐一さんにお話いただきました。(第68回コワーキングスペース運営者勉強会®)


東京都北区赤羽の「赤羽のコワーキングスペース アカコ」のインキュベーションマネージャー小林祐一様にお話いただきました。
小林様はNPO法人コミュニティビジネスサポートセンター(CBS) プロジェクトマネージャー・地域創業アドバイザーも務められています。

日時:2020年8月25日(火曜日)18時30分〜20時30分
場所:赤羽のコワーキングスペース アカコ(オンライン配信も同時開催)

赤羽のコワーキングスペース アカコを担当しています、小林と申します。

私から「コワーキングスペースと利用者の資金調達」ということで、コワーキングスペースを運営するにあたりどのように資金調達をしてきたか、そしてコワーキングスペースの利用者様が事業を展開していくにあたってどのように資金調達をしているかということをお伝えします。よろしくお願いします。

アカコの小林祐一さん

「アカコ」は「社会課題に向き合う起業家のためのコワーキングスペース」

まず、コワーキングスペースアカコの概要をご説明します。
所在地は東京都北区赤羽です。主に「社会課題に向き合う起業家のためのコワーキングスペース」です。駅近で仕切りのないワンフロアに展開しており、できる限りリラックスできる空間を演出していこうというコンセプトの下、運営しています。

2017年6月に今とは違う名称「ソーシャルビジネスワークセンター赤羽」という名前で運営が始まりました。その後2019年6月に名称を変更し、現在の赤羽のコワーキングスペース アカコとなりました。
また、2019年7月には、埼玉県さいたま市に浦和のコワーキングスペース ウラコというコワーキングスペースを開所しました。

「アカコ」は働き方改革やライフワークバランスなど、さまざまな課題に向けて活動・運営をしています。その中でも特に「地域連携拠点の不足」を問題と捉え、「コミュニティづくり(産学官金)に関する拠点の一つを提供」することをメインに据えて活動しています。

目標としているのは、「アカコ」を拠点として人が集まることです。「自己実現や地域連携」を多数結成し、市民力により「新しい地域」「新しい時代」を提供する一助になりたいと考えています。

「アカコ」が一プレイヤーとして地域課題の解決に取り組む

地域課題を解決するにあたって、NPOや行政、大学や金融機関が協力して取り組む「産学官金」という流れがあります。その中で「アカコ」というコワーキングスペース自体がそこの一つのプレイヤーとして連携し、解決していきたいと考えています。

具体的な内容は、高齢化社会に向けてどのような問題を解決していけばいいか、衰退してきている商店街に対しどのようなことをすれば活性化出来るか、等です。それぞれに対してプロジェクトを立ち上げ、関係各所と連携して地域貢献をしたいという思いで運営しています。

実のところ、「アカコ」はコワーキングスペース単体としては運営が難しい状態です。担当も交代し、私は3代目として2020年6月から新しく担当しています。直近の目標は、収益黒字です。
これまでを振り返ると、広報が弱かったことがあるためホームページのリニューアル・イベント開催などで集客を強化していく方針です。ホームページについては既に自前でリニューアルしましたが、新型コロナウイルスの影響でイベント開催は自粛中しています。

ただ、必要な情報を分析して掲載しホームページをリニューアルした結果、問い合わせが増えてきた実感はあります。特に最近、本日も1名入居が決まりましたが、セカンドオフィス利用が増えています。起業するというよりは、会社の業務を一部ここでやりたいという方が多く、手ごたえは感じています。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

アカコの運営団体「NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター」

「アカコ」を運営しているのは、NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター(CBS)という団体です。

そもそもコミュニティビジネス(CB)とは何かというと、「市民が主体となり、ビジネスの視点や手法を活用しながら地域課題を解決していく事業形態の総称」と定義しています。
コミュニティビジネスのポイントは、「雇用創出」「地域経済の活性化」「地域環境の向上」「協働の推進」です。主に、「高齢化社会」「待機児童、環境保護の多様化」「環境」「まちづくり、商店街の衰退」など様々な問題解決をテーマにしています。

そのようなコミュニティビジネスを支える担い手や関係者を支援するのが、NPO法人コミュニティビジネスサポートセンターで、業界的には「中間支援団体」と呼ばれます。NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター自体がコミュニティビジネスをするのではなく、コミュニティビジネスをやりたい方を支える活動を行っています。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

NPO法人コミュニティビジネスサポートセンター(CBS)の事業内容について

NPO法人コミュニティビジネスサポートセンターの運営についてご紹介します。

まず資金調達手法ですが、一般企業であれば「事業収入」「融資」「出資」「補助金」「助成金」が一般的かと思いますが、NPO法人では事業収入以外に、「会費」「寄付金」「融資」「補助金」「助成金」という手段で調達しています。
コミュニティビジネスサポートセンターの資金調達手法は事業収入が中心であり、それを元にさまざまな事業を行っています。

次に我々が行っている事業をご紹介します。

まずは「人材育成」で、具体的には講演講師の派遣、セミナーやイベントの企画運営です。
イベントは自主的に開催することもありますが、主には行政関係のコミュニティビジネスの推進を担当しています。例えば、板橋区や北区のコミュニティビジネスセミナーの開催などを行っています。そのほか、認定講座を受託し実施することもあります。

2つ目は、「施設・拠点の運営」です。ここに、コワーキングスペース「アカコ」の運営が含まれます。
「アカコ」の運営以外に、東京都千代田区竹橋の近くにある「ちよだプラットフォームスクエア」という施設の立ち上げ支援を行った経緯があります。こちらはもともと中小企業庁が会議室等で利用していた建物の事業化にあたり、シェアオフィスとして展開するにあたっての支援を行ったというものです。
ほかにも、「アカコ」の建物の隣にある北区の創業支援施設「ネスト赤羽」を指定管理者として運営しています。

3つ目は、「コミュニティビジネスの創業・運営支援」です。
資金調達にも関連しますが、東京都で実施している創業者向けの融資事業「女性・若者・シニア創業サポート事業」の統括団体として、実際にそのサービスを運営しています。
ほかに、「東京ホームタウンプロジェクト(東京都)」という高齢者の方を地域で支えていこうというプロジェクトや「地域課題解決ビジネス普及事業(中小企業庁)」という創業者向けの大規模なシンポジウムなどを担当しています。これらが主な収益源、重要事業となっています。

4つ目に、中間支援機能として、広域関東圏コミュニティビジネス推進協議会やさまざまな地域ネットワークの創出も行っています。
そのほか、調査・研究・政策作りの協力として当NPO法人代表理事の永沢が各種行政・政府系の委員会に参加・提言をさせていただいています。

最後に、コミュニティビジネスの普及を目的としたテキスト・マニュアルの作成・販売や、事例集・報告書の作成などの情報発信も行っています。

NPO法人コミュニティビジネスサポートセンターの資金調達に関しては、「中長期的に地域社会と行政機関と連携をする」というスタンスで、信用をもとに徐々に拡大してきました。
セミナーを例に挙げると、規模が小さいということもありますが、そこで信用を勝ち取ることができれば、徐々に大きな規模に拡大していきます。それを約20年間継続してきたことで大規模な案件もいただけるようになり、NPO法人として体力の基盤ができていきました。

ただし、収益が出たから贅沢をするということではなく、社会性の高いコワーキングスペースを運営するなど、NPO法人として収益を社会に還元しています。
コワーキングスペースに関しては、利用料金を安めに設定していることも一つの社会貢献として考えています。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

コワーキングスペース利用者の資金調達

次にコワーキングスペース利用者さんの資金調達についてお話します。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

2016年の中小企業白書によると、創業期の課題として、資金調達が1位で約60%を占めています。ある程度軌道に乗った成長期でも、やはり資金調達が課題の1位です。
資金調達に続いて課題となるのが、質の高い人材の確保です。「資金が調達でき人材」という流れは、今後も変わることはないと思います。この点から分かるように、やはり資金調達、お金にまつわる部分が皆さま一番苦労される点です。

企業の一般的な資金調達方法は、「事業収入」か「融資」がメインで、「出資」「補助金」「助成金」というのは確実性が低くなります。

「出資」に関しては、クラウドファンディング、エンジェル投資家・ベンチャーキャピタル(VC)による投資があります。創業期に関しては、比較的クラウドファンディングを希望される企業が多いと思います。

「補助金」に関しては、小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金、「助成金」に関してはキャリアアップ助成金などが有名です。
助成金はある程度条件を満たせば支給される傾向にありますが、補助金を受けるためには審査があるため努力や苦労も必要となり、実際には難しい面もあります。

特にお伝えしたいのが、「融資」に関する部分です。融資に関しては、日本政策金融公庫さんが有名で、「新創業融資制度」を利用される方も多いと思います。ほかにも、各自治体の相談窓口の「制度融資」と呼ばれる信用保証協会による融資制度を利用される方も多いです。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

融資制度「女性・若者・シニア創業サポート事業」

融資制度の中でも我々が事務局として運営しているのが、「女性・若者・シニア創業サポート事業」(※東京都のみ)です。私はこの事業も兼任しています。女性、39歳以下または55歳以上の男性で、都内で創業予定の方、または創業後5年未満の方が対象の制度です。
これは「低利融資」「事業計画アドバイス」「経営サポート」の3つを軸とした制度です。

「低利融資」では、金融機関と創業者の方をつなぎ、1%以内の金利で創業融資を検討していただきます。

「事業計画のアドバイス」は我々のような団体がアドバイザーとなって、事業計画書を一緒に作っていきます。事業計画書は東京都に補助金を申請する際や、金融機関に融資を申し込む際にも必要です。そのため、金融機関自体が審査を通しやすくするための事業計画の書き方もお伝えしています。結果として、制度を利用された事業者様の融資実行率は高くなっています。

融資実行後には「経営サポート」ということで、年に3度ほど、アドバイザーが事業所を訪問し、補助金や助成金の活用方法を含めた経営相談を行います。

「女性・若者・シニア創業サポート事業」の活動の流れをご紹介します。
まず、創業者がいらっしゃったら低金利で金融機関とつなぎます。それと並行して、地域創業アドバイザーとして「セミナー・個別相談」「事業計画アドバイス」「経営サポート」などの活動をします。アドバイザーは現在25団体あり、CBSはそのうちの一つとして活動をしながら、さらに統括団体としても全体の運用も行っています。アドバイザー総数は200名を超える規模になっています。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

融資の可否のポイントは、「経営者としての資質」

融資をするかどうか話を進める中でポイントとなるのは、経営者としての資質です。これはコワーキングスペースを利用される事業者の方も同じだと思います。融資が通りにくい方は、だらだらしている・自分本意・前向きではないなど、経営者の資質に問題がある傾向があります。
逆に融資が通りやすい方というのは、信用やスピード感があり、自分本意ではなく常にステークホルダー(顧客・社員など)中心にした事業を展開されている、前向きといった特徴があり、我々も判断の基準としています。
また、仕方なくやっている方より、自分がやりたかったことをやる・社会課題を解決して社会を変えたいなどの思いがある方が金融機関としても共感しやすく、サポートもしやすいです。

ほかには、自己分析ができているか・独りよがりになっていないかという点も大切です。今置かれている立場を自己分析によって理解し、物事に対して多面的であるかというのも重視している点です。まとめると、「経営者としての自覚」が重要です。

企業生存率・廃業率について

まず廃業率について見てみます。
中小企業白書によると、企業の生存率は創業1年後が97%、5年後が82%となっています。ただし、これは帝国データバンクのデータベースに登録されている事業者さんを元に書かれているため、本当に小さな事業者さんは含まれていません。実情は97%よりは低い数字、生存率80%などもあり得ると考えています。

都市伝説のように、企業生存率は1年後が40%、5年後が15%など言われることもありますが、これは、コンサル会社などが独自に母数の少ない数値を元に出している数字で、こんなに低いことはないと思います。
ただ、ネットで調べるとこの数字だけが先走ってしまい、事業者さんの恐怖心をあおっています。とはいえ、中小企業白書の創業20年後の数字=生存率52%というのを見ると、少なくとも半分程度は生き残るのは難しいと考えて良いでしょう。

では、どのような方が成功して、どのような方が失敗するのか、アドバイザーをしている中での事例をお伝えします。

失敗で多いのは、資金のショート、事業計画の不備

失敗の理由で多いのは、資金がショートしてしまうということです。これはコワーキングスペースを利用され、事業展開されている方の中でも突出していることだと思います。
このリスクを少しでも回避するために、「コスト管理」「運転資金の確保」「報酬の分配」、例えば創業時からいきなり自分の報酬を高く設定していないかなどの部分を、改めてチェックする必要があります。

次に事業計画に不備があるというものです。計画書を書く段階で、1カ月・2カ月、1年先などの短期的な視点も大切ですが、中長期的な視点も大切です。
あとは、追い込まれた経営者の方に多いのが、この手を使えば今までの負債が全て取り返せるというような一発逆転思考を持たれていることです。一発逆転しようとした結果、本当に手の付けられない状況になってしまうケースが多く見られます。事業規模を見誤り、いきなり人を雇ってしまって固定費ばかり増えてしまうのも、注意すべき点です。

友人とビジネスパートナーとして一緒に会社を立ち上げるというのは、リスクが大きいと思います。全てが失敗に終わるわけではありませんが、見ているとほとんどが仲たがいをして一人だけ残ってやり続けるパターンです。最初から最後までパートナーとしてやっていくということは、非常に難しいようです。どうしてもパートナーが必要であれば、対策として、起業当初に業務の範囲や報酬について契約書を交わしてから運営された方がいいと思います。

そのほか、失敗の要因として挙げられるのが、時代の流れを捉えきれていないということです。こだわりが強すぎて、今でいうとコロナ禍でビジネスモデルを変えざるを得ないことが多々ありますが、これまでのまま繰り返してやろうとして失敗してしまうこともあります。

成功のポイントは、理念のある確実な事業計画、会計知識、マネージメント能力

成功された方を簡単にまとめると、理念をしっかりと持っている方が多いです。それは「事業計画」という形で表れてくるものですが、そこにこだわることで融資も受けやすくなります。また、会計に関する知識も重要です。プロの方に任せる・得意ではないと丸投げしてしまう方もいらっしゃいますが、ある程度学ぶ意識は必要です。

ほかには、マネージメント能力自身のスケジュール管理という点もポイントです。
私も面談をしますが、わかりやすい例で言うと遅刻をしても謝らないなど、そういう方はどこかで躓く感覚があります。そういった意味ではさまざまなことに優先順位を定め、イベントなどを含めた人的ネットワークを活用・構築することが、成功の秘訣ではないかと思います。

第68回コワーキングスペース運営者勉強会®でのご登壇の様子

昨今の融資状況について

昨今の融資に関する傾向を簡単にお話します。

コワーキングスペース特有の融資の傾向として、コワーキングスペースやシェアオフィスを利用しているという理由で、金融機関が融資を断るケースが増えています。
理由は、金融機関の方が事務所(コワーキングスペース)に来ても、どのような事業をしているのかというのを掴みにくいこと、本当は何もしていないのではないかという印象を持たれてしまうことです。例えば、EC系の事業をされる方は、商品自体は倉庫に預け、事務作業はコワーキングを利用されることも多いと思います。

実際には、コワーキングだからダメというよりは、体制や拠点ついて明確に説明できるようであればきっと融資はされるのだと思います。その反面、説明や計画が曖昧であれば、そもそも入り口の段階で断られてしまいます。特に今この傾向が強くなっていると感じています。

業種による傾向としては、BtoCモデルは嫌がられる傾向にあります。特に有料・課金制でネットコンテンツ配信をしている企業では、初めから話を聞いてもらえないこともあるほどです。

融資が通りやすい事業業種としては、既に信頼・信用があって、同じコンテンツ販売でもBtoBで大手の事業者にまとめて販売するものや、まとまったお金が毎月入ってくるような契約形態を整えている場合などです。
このような安定した収入が見込める業態であれば、今の厳しい時期でも融資は受けられると思います。

繰り返しになりますが、融資を目指すのであれば、「説得力のある事業計画と経営者の信用がカギ」になると思います。

NPO法人の事業の一環として、コワーキングスペースの運営と同時にサポートを行っています

コワーキングスペースでの融資サポートというと、さまざまな手法や報酬などがあると思います。その中で、我々のようにNPO法人の活動の一環としてコワーキングスペースを運営しているところもあるということを、知っていただければと思います。

利用者さんの事業規模が大きくなれば、融資や出資サポートという話が出てくると思います。我々としても、コワーキングスペース協会を通じて情報共有をどんどんしていき、皆さんをサポートできればと考えています。
今後とも、共有できる情報は発信させていただきますので、よろしくお願いします。

本日はありがとうございました。

赤羽のコワーキングスペースアカコ

この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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