コラム

特定非営利法人コミュニティビジネスサポートセンターが運営する「赤羽のコワーキングスペース アカコ」の運営責任者・インキュベーションマネージャーの小林祐一様にお話いただきました。


本日は、2017年6月にオープンした「赤羽のコワーキングスペース アカコ」を運営されている特定非営利法人コミュニティビジネスサポートセンター(以下CBS)の小林祐一さんにお話を伺います。

赤羽のコワーキングスペース アカコでの集合写真
一般社団法人コワーキングスペース協会のメンバーがお話を伺いました。

「コミュニティビジネス」とは市民が主体となって地域の課題や問題をビジネスの手法、視点を活用しながら解決していく事業の総称で、CBSは地域のコミュニティを基盤とした新しいビジネスの育成を目指している団体です。

コミュニティビジネスでは、具体的には、介護事業やシニアの派遣事業を通じて高齢化社会という地域の課題を解決したり、空き家や空き店舗をリノベーションすることでまちづくりに貢献したりします。

CBSの事業としては、セミナーや認定講座の開催を通じた人材育成、「ネスト赤羽」などの支援施設の運営、金融機関と連携した融資の支援などを行っています。

今回お話していただいた小林さんはCBSの職員で、プロジェクトマネージャー・地域創業アドバイザーと兼任する形で、現在は「赤羽のコワーキングスペースアカコ」の責任者も務められています。

赤羽のコワーキングスペースアカコの小林さん
赤羽のコワーキングスペースアカコの責任者、小林祐一様

地域との連携拠点の1つとしてコワーキングスペースを始めました

―赤羽のコワーキングスペース アカコの隣には、CBSが管理・運営をする東京都北区の創業支援施設「ネスト赤羽」があり、コワーキングスペースとしてこのような立地は特徴的かと思います。
ネスト赤羽の利用者とアカコの会員さんには関連性があるのでしょうか?

はい。ネスト赤羽から退居される事業者さんに利用いただくことも想定してコワーキングスペースの運営を行なっています。

まずネスト赤羽とは、東京都北区で新たに創業する方、創業間もない個人・法人の応援をする施設で、赤羽のコワーキングスペース アカコの隣にある施設です。

実は2017年3月まで、現在アカコと同じビル内に入っているCBSの事務所は現在地と反対側の赤羽駅南口方面にあったんです。当時の事務所の契約更新の時期がきたり、また手狭になったという話も出たりしていたので、新しい場所に事務所を探していました。そんな中、たまたまネスト赤羽の隣の物件が空いており、大家さんも協力的だったので、契約期限に事務所移転と同時にコワーキングスペースをオープンさせたんです。

ネスト赤羽から移って来られる方はアカコ会員の2、3割ですね。比率的に悪くないと思います。

―2017年6月にオープンして、現在は22人の会員さんがいるとのことでしたが、どのようなペースで増えていったのでしょうか?

実は1年目は2、3人しか入居しませんでした。翌年には12~13人が入居しましたが、入れ替わりが激しく、3年目にまた10数人入ってきて今に至ります。退居される方の退去理由は、事業として経費をここで使うのはどうかという話になったり、そもそも事業をやめてしまうことが多かったです。今はとにかく退去率を下げるのが目標です。

―新型コロナウイルスの影響はありますか?

コロナで利用者が減るような影響はないですね。ホームページの充実を図り、そこからの集客を行っています。
逆にドロップインで利用したいというお問い合わせもありますが、会員限定のコワーキングスペースなのでそれらは対応していません。

CBSとコワーキングスペースの連携をしたい

―特定非営利法人コミュニティビジネスサポートセンター(CBS)は具体的にどのような取り組みをされているのですか?

大きく分けて4つあります。
1つ目は、人材育成です。目的や予算に応じて企画から運営まで行います。例えばセミナーでは、コミュニティビジネスの担い手、支援者の発掘や育成を目的として事業計画を作成したり、事例の紹介や現場見学会を実施しています。

2つ目は、施設・拠点の運営です。
ネスト赤羽は事業者の経営相談に乗ったり、事業者間の交流を促したりして事業者が北区内に自前の事業所を持つまでを育成することが目的です。

3つ目は、コミュニティビジネスの推進です。「女性・若者・シニア創業サポート事業」では、低利・無担保の創業者向け融資を支援します。また、東京ホームタウンプロジェクトでは各地域で連携して地域福祉の担い手となる団体の「基盤強化」支援をしたりします。

4つ目に、中間支援機能として他地域との連携や、交流機会の提供を行っています。例えば、なにか事業を始める際に行政の窓口を紹介したり、ボランティアが必要なときには関連する団体に要請することができます。

赤羽のコワーキングスペースアカコの小林さんへの取材の様子

地域に密着したコワーキングスペースを目指したい

―現在はどのように集客を行っていますか?

口コミのほかに、CBSとして市区町で登壇する機会にアカコを紹介することもあります。また、北区の認定支援施設のホームページで紹介してもらったり、赤羽経済新聞というインターネット地域メディアでも紹介されたりもしています。

また、利用者さんとお話して「イベントが重要ではないか」という意見もいただいたので、これからは勉強会も始めて、そこから認知度を向上させたいです。

―入居者の層はどのような方々が多いですか?

もともと赤羽を拠点にIT、ウェブ系のお仕事をされている20代から30代前半の方々が多いです。

アカコの運営団体であるCBSがコミュニティビジネスを専門に行っていることを入会理由にされる方も今後増えるとうれしいです。

IT、ウェブ関係のお仕事をされている方ももちろん大歓迎です。その中で、もちろん有償で構いませんので、コミュニティビジネスに賛同して関わって頂けるのであれば特にうれしいです。

まだアカコがコミュニティビジネスの推進を目指していることを十分に認知いただけていないので、今後はコミュニティビジネスというキーワードでの集客を目指したいです。

コワーキングスペース運営は初めての挑戦

―赤羽のコワーキングスペース アカコ立ち上げ時のこだわりなどがあれば教えて下さい。

最初は最低限のものだけ準備して、その後利用者さんの意見を聞き、求められるものがあれば導入していくという形を取りました。今はいろいろな物が増えてきていますね。

赤羽のコワーキングスペースアカコの備品・設備
利用者さんの要望に応えて増えていった備品

―アカコさんの料金設定はリーズナブルな印象を受けますが、その点はいかがでしょうか?

実は当初は月額利用料が18,000円でした。最初の1年半は、そのままの価格だったのですが、集客の観点から近隣の施設の価格帯に合わせて月額12,000円に見直しました。今では利用者さんに「安すぎるのではないか」と言われるようになりましたが、今からまた料金改定をすることは考えていません。

―立ち上げ時に苦労したことなどあれば教えて下さい。

コワーキングスペースの運営に関しては素人集団だったので、内装や雰囲気を世間一般的なコワーキングスペースに寄せていくのが大変でした。あとはやはり集客が難しいですね。スペース作りに関しても集客に関しても、引き続き試行錯誤しながら取り組んでいます。 

コワーキングスペースの運営面について

―運営に使っているツールなどはありますか?

入退室は、出入り口のスマートロックにパスワードを設定しているので、それで管理しています。利用料徴収は銀行振り込みのみで、現金のやりとりは一切しません
施設内の会議室は専用の用紙でスケジュール管理しているのですが、最近会議室需要が高まってきているので、利用者さんとツールを共有するなど新しい管理制度を整えていく予定です。

利用者さんとの対話でスペース内の課題を解決していく

―今後はどのようにコワーキングスペースを運営していきたいですか?

利用者さん同士の交流を促していきたいです。現状、気の合う方々同士の交流はありますが、全く関わりがない方々も多いです。交流会やセミナーを開催していくことで、仕事をシェアできる環境を作っていきたいです。

単純にセミナーで何かを学ぶというのではなく、「創業支援ができる人材育成」をテーマに開催したいと考えています。
例えば、行政書士や中小企業診断士の方など資格を持っていても実際に仕事を取りに行くのが難しいというような課題を抱えている士業関係の方も多いと思いますが、そういった方にもアカコを活用していただきたいと思います。

―今後拠点の拡大などは考えられていますか?
埼玉県さいたま市浦和区にもCBSが運営されている「浦和のコワーキングスペース ウラコ」があるかと思いますが、役割分担や連携などもあるのでしょうか。

ウラコはさいたま市をはじめとした地域支援を目的に活動しており、埼玉県やさいたま市から受託を受けた案件を引き受けることもあります。一方アカコは東京都北区とのつながりが強いわけです。なので、行政とのつながりの広がりによっては、今後拠点が増えることもあるかもしれません。
アカコとウラコの連携に関しても、今後進められたら良いと思います。

―行政とのつながりの強さがアカコやウラコの特徴と言えるのですね。そのほかにアカコの強みはどのような点があると思われますか?

CBSのスタッフがコワーキングスペースの下の階にいるので、いつでも入居者さんの相談に乗れることです。例えば、資金調達で困っている利用者さんに、助成金等に詳しい人を紹介することなどができます。

また、スペースの間隔が広くゆったりしているのは強みです。窓からの景色が良く、電車、緑が見えるのも良いと思っています。

赤羽のコワーキングスペースアカコの内観
全体的にゆったりしているスペース

―最後に何か一言ありましたらお願いします。

これまでやってきたことの中で何も無駄なことはないと感じています。
例えば、前職で培ったITの知識はコワーキングスペースの運営で生きていますし、創業支援のノウハウも同じく生きているということを考えると、現在行っているコワーキングスペースの運営も次のステップで無駄にはならないと思います。
以前は自分がコワーキングスペースの責任者をやるとは思っていませんでした。特に若い方には無駄なことはないという前提で最初は大変でも粘り強く頑張って欲しいです。

本日は赤羽のコワーキングスペース アカコを運営されている、特定非営利活動法人コミュニティビジネスサポートセンターの小林さんにお話を伺いしました。ありがとうございました。

「赤羽のコワーキングスペース アカコ」基本情報

住所東京都北区赤羽1-59-8 ヒノデビル4階
アクセス■JR
赤羽駅:東口徒歩7分
■南北線
赤羽岩淵駅:2番出口徒歩3分
月額料金12,000円~
ドロップイン料金
座席数30席
固定席の有無なし
営業時間・定休日営業時間:9:00~21:00 
URLhttps://akaco.cb-s.net/