コラム
有限会社ノオトが運営するコワーキングスペース「Contentz」について、ノオト代表・宮脇淳さんと管理人・鬼頭佳代さんにお話を伺いました。
「Contentz(コンテンツ)」は、JR山手線・東急池上線五反田駅から徒歩3~4分、ITベンチャーが集まる地に2014年7月1日にオープンしたコワーキングスペースです。

今回は、Contentzを運営する有限会社ノオト代表の宮脇淳さんとContentz管理人の鬼頭佳代さんから、コワーキングスペース立ち上げの経緯や運営元がコンテンツメーカーならではのスペース作りにおける工夫、そして今後コワーキングスペースの立ち上げを目指す方へのメッセージをお伺いします。
「Contentz」を運営するのはコンテンツメーカー
Contentzを運営しているのは、企業のオウンドメディア制作を中心にサービスを展開するコンテンツメーカー、有限会社ノオトさんです。
2004年に創業し、ウェブメディアや紙媒体のコンテンツ企画・編集・運営などを手掛けています。

そんなコンテンツメーカーがなぜコワーキングスペースを運営するに至ったのでしょうか?
そのきっかけは約7年前、有限会社ノオトのオフィスの移転にありました。
(宮脇さん)従業員や事業の拡大に伴い、広いオフィスへの移転を検討していたところ、価格帯に見合う広いオフィスを五反田で見つけることができました。このビルはワンフロアに3室あるのですが、501号室を自社のオフィス用に、503号室をコワーキングスペース用にと2部屋を借り、まずは社員の引っ越しを済ませてから、コワーキングスペースのオープンに向けて内装工事を進めていきました。
当時、コワーキングスペースに着目した理由として、地場の中小企業によるコワーキングスペース運営の流れもあったといいます。
(宮脇さん)ノオトは、地域メディア「みんなの経済新聞」ネットワークの一員として「品川経済新聞」を運営しています。そのなかで知り合った、ほかの経済新聞を運営している企業がコワーキングスペースを始めており、親和性も感じていました。
なぜ、編集者・ライターなどコンテンツ制作者向けのスペースにされたのでしょうか?
(宮脇さん)当時、五反田には既に他社の運営するコワーキングスペースがありました。そこで、本業であるコンテンツメーカーの強みを生かして、ライターやカメラマンなどコンテンツを作る人が集まれる場所を作ろうと考えました。
昔は雑誌の編集部で駆け出しのライタ―が最初の仕事をそこでもらったり、雑談から仕事が生まれたりしたのですが、メールをはじめオンライン化が進んだ今の時代だとそういうことが少ないですから。自社のオフィスの隣にそういう場所を作ろう!という発想です。
本業を一番に考えたスペース運用
コワーキングスペース立ち上げ時、コンテンツメーカーならではのこだわりをお聞きしました。
(宮脇さん)とにかく本業を圧迫しないように、借りる物件の価格帯に注意したり、年末年始・日曜は定休にして私たちの会社に合わせた営業時間にしたりするなど、工夫しています。ご利用者様にも「終わりがある感じがいいね!区切りがつくから頑張れる!」と好評です。
とはいえ、不特定多数に来てほしいわけではないと話す、宮脇さん。
(宮脇さん)あえて会員制とし、過度な広告は出さないようにしました。コワーキングスペースを場所貸しビジネスだと位置づけるならもっと宣伝するべきなのでしょうけど、例えばスペースマーケットさんのような媒体には情報を出さないようにしています。
というのも、不特定多数に利用をしてもらう形にすると、運営の業態を変えなきゃいけなくなります。なので、稼働率はそこまで気にせず、会員さんやスポットで使うライター、社員の作業場所として使いやすいスペースづくりを目指しています。
完全会員制ということで、落ち着いた雰囲気のContentzさん。実際の利用者層はどうなのでしょうか?
(宮脇さん)オープン時から、既に五反田にあった他のコワーキングスペースと利用者の層が被らないようにターゲットを明確にしました。Contentzを利用される方は基本的に2つのタイプに分かれていて、編集者やライターなどコンテンツ制作をされている方、もしくは近所にお住まいの方です。また、コンテンツ制作に関係ないお仕事をされている方も、当社の記事制作の取材先として協力いただくケースもあります。
コンテンツメーカーならではのスペース作り
Contentzには、ほかの施設ではあまりない珍しいスペースが多くあります。例えば、居酒屋や喫茶店風に撮影できる半個室のスペース、インタビュースペースなど。



どんな作りなのかというと…
(鬼頭さん)最初は、普通のオシャレな感じのオフィスをイメージしていました。けれど、社内でブレストした結果、「居酒屋スペース」や「喫茶店スペース」を作ることになったんです。
例えば、居酒屋で座談会をする記事を作る場合、本物の居酒屋を借りるのは意外に難しい。借りられても、薄暗かったり、周りの音が大きかったりして、取材には向かないこともあります。そこで、社内に居酒屋スペースを作りました。おちょこ、小皿、ビールジョッキ、メニュー表風のスペース案内などの小道具も用意しています。
取材用のスペースなので、いろいろな角度から撮影できるように開閉する障子や窓を設置する工夫もしてあります。とにかく私たちのターゲット層である編集者さん、ライターさんにとって使いやすい場所にしました。
定期的に行っている#ライター交流会
Contentzでは、編集者・ライターをターゲットとしたイベントの企画も幅広く行っています。
(鬼頭さん)現在はコロナ感染予防のため対面イベントは控えていますが、2015年から「#ライター交流会」を行っています。これはメディアにかかわる編集者、ライター、カメラマン、デザイナーさんなどが集まる交流イベントです。
(宮脇さん)この交流会を始めた当時はメディア関係の人が集まる機会がなかったので、せっかくスペースもあるし、コワーキングスペースの宣伝になるしということで始めました。コンテンツの企画側と制作側のマッチングの機会にもなることはもちろん、これは本当にご縁ですが、交流会の参加者でそのまま弊社の社員になった人もいます(笑)。
地方でも#ライター交流会をやりたいという声をいただくようになり、全国津々浦々で開催しました。コロナ禍ではオンラインで#ライター交流会を行っています。
話題性で本業につなげる
Contentzは2016年7月、「分室」として近所の飲食ビルにコワーキングスナックをオープンしました。コンテンツメーカーがなぜスナックを運営する流れになったのでしょうか?
(宮脇さん)私たちのスペースは静かに作業をする方が多いので、コミュニケーションを取る機会があまりなかったんです。なので、密なコミュニケーションをより取りやすい場所の必要性を感じて分室を作ることにしました。
ちょうどそんなタイミングで、私がよく通っていたスナックだらけの飲食ビルに空きが出て、内装もいわゆる昭和のザ・スナックだったので、じゃあそのままスナックにしちゃえばいいや、と(笑)。コンテンツメーカーが運営するスナックなので、ママもチーママもライターさんです。
有限会社ノオトがスナックやコワーキングスペースを運営する理由はそれだけではないようで…?
(宮脇さん)コンテンツメーカーは、クライアントから選んでいただくためにも、インターネットでの評判を上げておくことも必要です。私たちは普段取材する側ですが、コワーキングスペースやスナックを運営していると、取材される側に回ることもできます。
そうすることで、自分たちの取り組みが露出される機会が増え、企画力・実行力をアピールできるわけです。大手の編集プロダクションやコンテンツメーカーにはできないような、そういった地道な取り組みを重ねることで、私たちのような小さな会社でも見つけてもらったり、選んでもらったりする機会が増えると考えています。
「なるべく楽をする」をモットーにしたツール・スペース運用
本業を第一に考えるスペース運用で、利用されているツールや、スペースのシフト管理についてお伺いしました。

使用しているツールとは…?
(鬼頭さん)以前は、既存のクラウド受付システムの無料版を使っていたのですが、機能の限界を感じていました。そのとき縁があって、会員さんに新しくスペース管理システムを作ってもらうことになったんです。
受付呼び出しはもちろん、スペース予約、会員情報の管理機能など、運営に必要な機能はすべてつけてもらいました。このツールのおかげで、スペース予約情報の管理や月末の請求に苦労することが大幅に減りました。支払いは、現金・LINE Pay・PayPayが利用可能で、土曜のみドロップインも受け付けています。
スタッフのシフトはどのように管理しているのでしょうか?
(鬼頭さん)コワーキングスペース専任スタッフやアルバイトはいないので、コワーキングスペースでのスタッフ勤怠は管理していません。社員10人の中で朝シフト2人、夜シフト2人の当番制にしてスペースの開け閉めをしています。
今後の展望
有限会社ノオトさんの今後の展望をお伺いしました。
(鬼頭さん)コワーキングスペースの価値の一つは、「集まれること」。そこが発揮できていないのはもどかしいです。コロナ禍が落ちついたら、会員さんたちと集まってワイワイしたいですね。また、みんなで集まれるイベントを開催していきたいと思います。また、オンライン取材が当たり前になってきたので、取材専用プランなどを作るのも面白いかなと思っています。
新しくコワーキングスペースを立ち上げる方へ
最後に、これから新しくコワーキングスペースを立ち上げる方へ、ひと言頂きました。
(宮脇さん)今は大手企業もコワーキングスペース業界に参入してきているので、新しく始めるのはかなり厳しいかもしれません。個人運営なら、その地域にコワーキングスペースがなくて、自分がその町のまとめ役になるぐらいの気持ちを持つ必要があると思います。
また、余っているスペースの有効活用でコワーキングスペースを始めるような大企業を相手に、個人や小規模な会社が勝ち筋を見つけるのは一筋縄ではいきません。とにかく、本業や得意なことと掛け合わせるような形で企画することをお勧めします。
編集者による編集者のためのコワーキングスペースContentz。これからもコンテンツが生まれる場所、新しい繋がりが生まれる場所としてあり続けるでしょう。
「Contentz」基本情報
住所 | 東京都品川区西五反田1-13-7 マルキビル503 |
アクセス | JR山手線・東急池上線五反田駅:徒歩3分 |
月額料金 | 15,000円~ |
ドロップイン料金 | 1時間:500円 1日:2,000円 ※ドロップインは土曜日のみ(9:00〜18:00) |
座席数 | 45席 |
固定席の有無 | あり |
営業時間・定休日 | 営業時間: 平日9:00~21:00 土曜9:00〜18:00 日曜・祝日定休 |
URL | https://contentz.jp/ |
備考 | 同施設内に貸会議室を併設 |