コラム
東京都の認定インキュベーション施設「BUSO AGORA」について、BUSO AGORAのコミュニティマネージャー須賀彩水様にお話いただきました。(第67回コワーキングスペース運営者勉強会®)
2019年8月にオープンし、東京都の認定インキュベーション施設で、東京都町田に展開するインキュベーションオフィス「BUSO AGORA(ブソウ アゴラ)」のコミュニティマネージャー須賀彩水様にお話いただきました。
日時:日時:2020年7月27(月曜日)19時00分〜22時00分
場所:BUSO AGORA(オンライン配信も同時開催)
BUSO AGORAのコミュニティマネージャーを務めています須賀と申します。よろしくお願いします。
本日は、BUSO AGORAの「施設利用紹介(機能的価値)」「イベント(社会的価値)」「コミュニティ形成(心理的価値)」の3つについてお話させていただきます。
コンセプトは「夢が加速する」
思いを大切に運営しています
BUSO AGORAのコンセプトは、「夢が加速する」です。
「一人で目指していたら10年かかってしまっていたであろうことが、BUSO AGORAで色々な人と出会い、5年・3年とより早く夢が叶ったり、より良くなれたりできれば」という思いで運営しています。それぞれの得意を持ち寄って助け合えるコミュニティであり、相乗効果でお互いを高め合い昇華できる場所でありたいという思いを込めて、このコンセプトにしました。
コミュニティ形成を促す空間作り
BUSO AGORAはビルの4階にあり、158坪のワンフロア全てがコワーキングスペースになっています。
入口を入ってすぐにシェアキッチンとバーがあり、よく入居者さんが集まって、夜はお酒を飲みながらお話しされている姿も見られます。
ここはBUSO AGORAのコミュニティの中心部と言える程とても大切な場所で、「誰でも通る場所」に位置しています。シェアキッチンはフリードリンクで、お菓子を持ち寄ってシェアするようなムード作りをしていることもあり、コミュニケーションが生まれる場になっています。
シェアキッチンから中央に向かって進むと、50~60名収容のフリースペースがあります。ドロップイン利用もでき、料金は1,500円(学生は1,000円)です。会員さんは打ち合わせ用にゲストを2時間無料で呼ぶことができます。
雰囲気作りで大切にしている点として、会話が弾むように他のコワーキングスペースと比べてBGMをあえて大きくしています。そのほか、目が合ったときに挨拶がしやすいように、立ったときに目線の高さになる位置になるべく物を置かないように工夫しています。
用途に合わせて選べるワークスペース
窓際にはブース席が7室あり、ロッカー付きなので物を置いておくことができます。夜にライターさんなどが作業をされることが多いイメージです。
奥に行くと、2~4名で利用できる個室があります。クリアなイメージで上も開放されています。入居者さん同士がどのようなことをされているのかがわかるような作りにすることで、お互いが興味を持ったり話しかけたりしやすいようにしています。ブース席や個室は24時間利用可能です。
このような空間作りによって、さまざまなマッチングも起きており、最近ではオーダースーツを作っている方・カメラマン・これから起業したい方が、別々でフリーランスでいらっしゃったのですが、皆さん一緒に個室に入居されたというケースもあります。
個室と反対側の奥には、ミーティングスペースがあります。6~8名用の会議室が3つ、休憩スペースとしての利用やイベント開催もできるロフトがあり、ピラティスをされている入居者さんがワンコインレッスンを開催されるなど、自由に利用できます。
電話をする際に利用いただけるテレフォンボックスは、現在半個室型・個室型の2つ用意しています。テレワークの普及により、テレフォンボックス利用が増えてくるなどさまざまな需要の変化があるので、そういった点にも対応すべく8月には増設・バージョンアップの工事も予定しています。
BUSO AGORAでのイベント開催
自社主催・入居者主催と幅広く企画しています
次にBUSO AGORAで開催しているイベントについてお話しします。イベントには自社主催のものと、入居者さんが主催するものとがあります。
【自社主催】ビジネスや起業関係のイベントを豊富に開催
BUSO AGORAでは月に2日間、イベントデーとしてフリースペースを貸し切って色々なイベントを開催しています。
自社主催のものはさまざまなジャンルがありますが、最も力を入れており回数が多いのは、ビジネスセミナー・入居者さんがビジネスアイデアや起業の計画等をプレゼンする場所の提供です。そのほかにも異業種交流会や学生イベント等もたくさん開催しており、オープンからおよそ1年でリアルイベントが28回、延べ800名以上の方にご参加いただきました。
「武相イノベーションアワー」というイベントも月に1度主催しています。
3名のプレゼンターの方に、自身のビジネスアイデアや事業、ビジネスを進める上での悩みを発表していただき、その悩みを参加者と一緒にブレストしてアイデアをプレゼントするという会です。
コンテストには、100名以上の方が集まって目の前の人の夢を応援する盛大なイベントになりました。
【入居者主催】一緒にBUSO AGORAを盛り上げていこう!入居者さんのイベント開催は全て無料
入居者さん主催のイベントは、さまざまな規模のものがあり週に2~3回程度、BUSO AGORA内で無料開催していただいています。
BUSO AGORAの入居者さんは、施設内でのイベント開催は全て無料です。人数の制限はありますが、一緒にこの場を盛り上げていただきたいという思いで費用はかかりません。個人でイベントを開催する場合に一番大変なのは集客だと思いますが、BUSO AGORAで開催していただくイベントは、公式Facebookでの告知・動画配信などの集客サポートをしています。
新型コロナウイルスの影響で、リアルイベントが開催できない状況が2020年2月頃から続いているため、現在はウェブ開催イベントに切り替えて運営しています。
多いときで月12本のウェブイベントを開催しました。さまざまなイベントを開催しましたが、BUSO AGORAのPRだけではなく入居者さんにスポットが当たるようなイベントにしたい、イベントを通じて事業支援がしたいという思いで、そのようなコンセプトのイベントを開催しています。
コミュニティ形成のポイントは入居者交流会×BARカウンター×マッチング
最後にコミュニティ形成に関してお伝えします。
BUSO AGORAを運営する中で、コミュニティ形成のポイントは「入居者交流会」「BARカウンター」「マッチング」だと考えています。
入居者同士、気軽にコミュニケーションを取れるような取り組みを
入居者交流会に関しては、3つの活動を行っています。
1つ目はAGORA自治会です。これはAGORAをより良くするためにはどうすればいいか、どんなイベントを開催すれば良いかなどを入居者さんと一緒に話し合う場です。不満があったとしても愚痴になって終わりではなく、そこから改善につなげていきたいという思いを込めて開催しています。自治会には毎月15名程度の方に集まっていただいています。
2つ目は新規会員座談会の開催です。BUSO AGORAには毎月新しい会員さんが入ってこられるのですが、既存の入居者さんとつながりにくいという課題がありました。
新規会員座談会はそのような課題を解決するため、その月の新規の入居者さんが集まってコミュニケーションをとり、それをきっかけに輪に入っていけるようなきっかけ作りの場として活用いただいています。
3つ目は入居者さん同士が交流できるAGORA partyです。これは毎月開催している交流イベントで、バレンタインデーには、女性陣がたくさんチョコを作ってきたこともありました。みんなで食べ物を持ち寄ってシェアしようということで、その月のキーフードを決めて、楽しい時間を過ごしています。
BARカウンターのポイントは「BYO」
エントランスを入ってすぐの場所にあるBARカウンターは、日々人が集まる場でありパーティーも開催するということで、BUSO AGORAのキーポイントになると考えています。常に誰かがここで仕事をしていたり、集まったりしています。
ポイントとしているのが、BYO(Bring Your Own)です。日本語では「何か自分のものを持ってきてね」という意味になりますが、何か良いものをシェアすることで、色々なコミュニケーションが生まれるきっかけになっています。
例えば、お気に入りのコーヒーを入れて配ってくれたり、お酒を持ってきてシェアしたりという感じで、バーには現在20本くらいのボトルが置かれていますが全て入居者さんが持ってきてくださったものです。
ほかにも、BUSO AGORAを運営している株式会社キープ・ウィルダイニングが飲食業を展開しているという強みを活かし、カフェにも置かれているようなエスプレッソマシーンを設置しており、私がバリスタの資格を取って入居者さんにコーヒーを入れることもあります。BARカウンターで食を通じてつながることで、とても良い雰囲気が作れていると思っています。
イベントやBARカウンターから生まれる、さまざまなマッチング
イベントやBARカウンターを通じて、マッチングも起きています。
例としては、「ハンドメードスーツを作っている方がBUSO AGORAでカメラマンさんと出会い、ホームページ用の写真を撮ってもらったら売上が上がった」、「獣医さんが開業のタイミングでロゴを作ろうと思っていたときにデザイナーさんに出会い、ロゴを作ってもらった」、「宿泊施設の起業をしたいと考えている方がキャンピングカーを販売している方に出会い、キャンプのイベントを開催した」、「音楽制作をされている方がイラストレーターをしている学生さんとPVを製作した」等、このようなマッチングがたくさん起こっています。
BUSO AGORA内には当社、キープ・ウィルダイニングの本社も併設されています。その業務の中で日報を作成していますが、日報内で入居者さんの情報や興味を持たれそうなお話などをコミュニティマネージャー、インキュベーションマネージャーの間で共有しています。その情報を元に、具体的なマッチングについて考えています。
ほかにも、入居者さん同士の共有ツールとしてSlackを使用しています。Slackのチャンネルに事業相談サロンという場を設け、何か相談や質問事項があった場合にここに書き込むことで、いろいろな入居者さんが答えてくれるという仕組みも作っています。
このような仕組みの中から、お金ではない資源のマッチング、自分の得意としているものを交換するようなシーンがたくさん生まれていると感じています。
仕事場だけでない、居心地の良い空間
「仕事が休みだけどBUSO AGORAに遊びに来た」「バスの待ち時間に寄ってみた」「お土産だけ届けに来た」等、入居者さんにとってBUSO AGORAは仕事場としてだけでなく居場所として心地いい空間になっているのかなと思えるエピソードがたくさんあります。
人が集まる理由は、「話しかけられる環境づくり」「入居者さんはお客さんではないという風土」だと思います。特に、話しかけられやすい・話しかけやすい環境作りという面では、コミュニティマネージャーは「長屋のお姉さん」を意識しています。これは当社の社長からの提案なのですが、お仕事をする人ではなくそばにいておせっかいや気配りができるような人、ホスピタリティとしてサポートできる人というイメージです。
当たり前のことかもしれませんが、入り口で「おはようございます」「いってらっしゃい」と手を振り、利用者さんと私たちが対等な関係であることが目に見えるようにする、入居者さんのお名前を呼ぶようにするなど心掛けています。
お客様としての入居者さんではなく、人として興味を持つことが、雰囲気作り・環境作りに必要なことだと意識をしてコミュニティマネージャーの仕事をしています。
入居者さんではなく人として
最後に、私が1年間コミュニティマネージャーをしてきて、大切だと思う点、意識している点をお伝えします。それは「入居者さんではなく人として接すること」です。
私は2年前までは飲食店のサーバーとしてお客さんに何かを提供しながら、目の前の人を喜ばせようという思いで働いていました。そのときから「なぜこの人はここに来てくれたんだろう」というバックグラウンドを探るように意識していました。
相手のことをお客さんや入居者さんだと思うと、オペレーションで決められた対応をしてしまうことが多いと思います。そうではなく「人として何をしてもらったらうれしいだろう」という想像や気配りができれば、お互いに気持ちの良い関係が作れるのではないかと考えています。これからもこの点を意識してコミュニティマネージャーの仕事をしていきたいと思っています。
BUSO AGORAでは、当スペースの運営ノウハウを生かしたコミュニティ創りの企画運営などの事業サポートも行っていますので、ご参考いただければと思います。
ありがとうございました。
この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。
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