コラム

東京都の認定インキュベーション施設「BUSO AGORA」について、BUSO AGORAのインキュベーションマネージャー吉井慎人様にお話いただきました。(第67回コワーキングスペース運営者勉強会®)


2019年8月にオープンし、東京都の認定インキュベーション施設で、東京都町田に展開するインキュベーションオフィス「BUSO AGORA(ブソウ アゴラ)」のインキュベーションマネージャー吉井慎人様にお話いただきました。

日時:2020年7月27(月曜日)19時00分〜22時00分
場所:BUSO AGORA(オンライン配信も同時開催)

BUSO AGORAでインキュベーションマネージャーをしています吉井と申します。よろしくお願いします。
本日はBUSO AGORAのインキュベーション施設としての取り組み、特にプロモーション支援についてお話させていただきます。

BUSO AGORA インキュベーションマネージャー 吉井慎人さん

東京都の認定インキュベーション施設「BUSO AGORA」

BUSO AGORAは「インキュベーション(事業支援)をする場所」と位置付けてスタートしており、東京都のインキュベーション施設運営計画認定事業に2018年にエントリーして採択され、認定インキュベーション施設として助成金を受けています。この助成金の補助限度額は9000万円で、助成金としては高額ですが満額受けることができています。助成金の内訳は、整備・改修費の上限が5000万円、年毎の運営費が2000万円で最長2年となっています。
そのため、初期の段階から内装にもこだわったスペースを展開することができました。

認定インキュベーション施設として運営するためには、「創業支援に係る継続的かつ具体的な運営計画」や、「IM(インキュベーションマネージャー)の配置」が必要になります。

ですのでBUSO AGORAは、本来「インキュベーションオフィス」として展開しているのですが、まだあまり認知されていないキーワードであることもあり、基本的には「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」と謳わせていただいています。

参考:東京都産業労働局 東京都創業NET インキュベーションオフィス
   インキュベーション施設運営計画認定事業

BUSO AGORAでの事業支援

BUSO AGORAではさまざまな事業支援をしておりますが、その中でもプロモーション支援を必ず行なっています。
具体的にどのような支援かというと、「どのようなプロモーションがあるのか」ということ示す一覧を使ってご説明し、その中から人とお金のリソースをどこに割いていくかを選ぶものです。数が多いためここでは全ては紹介できませんが、BUSO AGORAのプロモーション内容を例にご紹介していきます。

BUSO AGORA インキュベーションマネージャー 吉井慎人さん

BUSO AGORAがどのようにプロモーションを行なってきたのか

例として、BUSO AGORAがどのようにプロモーションを行ってきたのかをご紹介します。

オープン前の事前広報活動

まず、オープンする前の段階で、ホームページより先にFacebookをスタートしました。まだ施設自体もロゴもできていない状況でしたが、今どのような状況か、そしてコンセプトや思い、工事中の写真や経過などをFacebookにどんどん発信していきました。

Facebookでの発信と同時に、BUSO AGORAを運営している株式会社キープ・ウィルダイニングは飲食店を40店舗程展開していますので、その飲食店を貸し切って勉強会やイベントを開催しました。そこで「BUSO AGORAとして、こういうものを作ろうと思っている」というような思いを、街の人に広報し始めました。このように、オープンする前の段階から積極的にプロモーションをしてきたことが、BUSO AGORAがオープンから1年たたずに黒字化できた最大の要因だと思っています。

BUSO AGORAは2019年8月にオープンしましたが、オープン月にFacebookページのいいね!とフォロワーが1000名を達成しました。
それだけではなく、オープン月に入居者さんも多く埋まっている状態でした。
事前活動としてイベントを開催しながら広報活動を始めていたことが、スタートダッシュの成功につながったポイントです。
イベントでは常に私たちのコンセプトや思いを伝え続けることを大切にしました。それらのイベント参加者が、そのまま入居者さんになってくださっています。

オープン前のイベントには、銀行の方から起業家さん、学生の方など、さまざまな方にご参加いただきました。そこでスーパーインターン生に出会い、その子は学校を休学してフルでBUSO AGORAの立ち上げのために働いてくれました。
BUSO AGORAがうまく走り出し、運営できているポイントは、東京都のサポートももちろんですが、プロモーションをうまく行なったこと、そしてインターン生・コミュニティマネージャーを含め、本気でコミュニティを作るメンバーがいたことだと思います。

目的をはっきりさせたホームページを

ホームページを作り始めたのは、オープン後です。Facebook開設 → 事前イベント → 施設オープン → ホームページ制作という順番です。ホームページは、単純にかっこいいものを作るのではなく、目的をはっきりさせることが重要と考え制作しました。

BUSO AGORAのホームページの目的は、資料請求と施設見学に来てもらうことです。その目的を達成するために、どこにスクロールしてもコンタクトの表示が画面に残るようにしています。

ホームページのSEO対策に関しては、どのようなキーワードで見つけてもらえるのかを意識して行なっています。基本的には、コワーキングスペースは「エリア×ビッグワード」で検索されるため、そのようなキーワードに力を入れています。このSEO対策は、後ほどご紹介しますが、プロモーションにも大きく関係してくると考えています。

入居者コラボイベントを通した支援とプロモーション

2020年8月現在、Facebookページのいいね!・フォロワーが、オープン当初の約倍の数になっています。

オープンした後も、イベントを多く開催してきました。
コロナの影響が出る前までは、オフラインで80回程度、およそ4日に1回のペースで何らかのイベントをしていました。コロナの自粛になってからは、週3回のペースでオンラインイベントを開催しています。
自社開催だけでは限界があるので、入居者さんとコラボしたイベントをたくさん開催している点もポイントです。
ちなみに本日着ているTシャツは、「ロゴ談」という入居者さんと私がやっているオンライン番組のオリジナルTシャツです。ロゴについて好き勝手に話をするという企画なのですが、こちらの企画をきっかけにコロナ期間中にもロゴの制作受注が決まったそうです。

このように支援とプロモーションを同時に行なえるような仕掛けも作っています。他にも「AGORA起業塾」という入居者さんが無償で受けられる、いわゆるアクセレレータープログラムも開催しています。

ワークスペースとしての機能だけでなく、事業相談が受けられるという点にメリットを感じてBUSO AGORA選んだ入居者さんも多いといって良いと思います。実際にAGORA起業塾を通して起業された方もいらっしゃいます。

「行ってみたくなる・問い合わせてみたくなる」というゴール設定を意識した集客戦略

集客に関しては、オープン時は、POPカードを作成し当社の飲食店舗に配置しました。
POPカードは、単純にカードを置くのではなく、しっかり問い合わせにつなげるというゴール設定をしました。エリアでのマーケティングを行なうための「地図」、そして問い合わせをするための「ホームページへのリンク(QRコード)」「電話番号」「メールアドレス」これらをしっかりと記載することが大切だと思います。

他にも、中の様子がわかるような写真を載せることはもちろん、ピクトグラム・シンボルを使って一目でどのような価値を提供しているのかという機能的な部分も伝えられるように工夫しています。

施設入口のビル広告ですが、まずはパッションカラーを使って目立たせること意識して制作しました。看板を見るだけで、金額・何を提供しているのか(シンボルマーク)・中の様子がわかるようにしています。

最も工夫した点は、タイトルを「コワーキング・シェアオフィス」とした点です。本来であればインキュベーション施設と謳いたいのですが、それだと現状あまり認知されにくいので、比較的広く知られているキーワードを使いました。

また、看板にも手に取っていただけるパンフレットを設置してみました。パンフレット型とPOPカード型を作成しましたが、圧倒的にPOPカード型の方が集客につながっています。集客の内訳は、オンラインとリアルが半分ずつくらいですが、リアルの中ではPOPカードの反応が良かったです。

オンライン集客で重要なのはMEO対策

オンラインの面ではMEO対策が大切だと考えています。
MEOとはMap Engine Optimizationの略で、Googleマップにおける最適化を図ることをいいます。つまりキーワード検索した際に、Googleマップにきちんとした情報と共に表示される状態にしておくことが大切です。

Googleは、Google マイビジネスというサービスを展開しており、登録するとGoogleからハガキが届きます。その暗証番号を入力することで、Googleマップ上に表示される情報をコントロールすることができます。これは無料で登録できるので、コワーキングスペースに限らずリアル店舗のビジネスにおいては、やらないともったいないです。

Google マイビジネスにはさまざまな活用方法があります。例えば、どこからどのような人が検索して来店したか、ホームページをどれくらいの人が見たか、電話問い合わせがあった件数、何曜日の来店が多いかなどを、全てデータで見ることができます。この情報を参照すれば、実際にどのエリアからGoogleマップを見て来店したかがわかるので、マーケティングの際にターゲットを絞る上での参考にもなります。

他にも、360度内覧、オンラインストリートビューのようなこともできるので、それも活用しています。ただし、こちらの写真についてはGoogle認定の撮影者の方にお願いをしないと表示されない仕組みになっています。

プレスリリースの活用方法

プレスリリースに関しては、単純にオープンを告知するという目的だけではなく、SEO対策につながるキーワードを意識して行ないました。PR TIMES(ピーアールタイムズ)というPRサイトを活用することで、オープンしてから延べ1700回以上メディアに取り上げていただいています。

BUSO AGORA インキュベーションマネージャー 吉井慎人さん

プレスリリースに盛り込むキーワードについても、ターゲットやSEOを意識しています。
例えば、起業支援がテーマのプレスリリースの場合は、起業する方が注目しやすい「インキュベーションオフィス」というキーワードを、そうでない場合はSEOを意識して「コワーキングスペース」「シェアオフィス」といった、より検索されやすいワードを多く採用するようにしました。
更に、BUSO AGORAと母体の会社であるキープ・ウィルダイニンググループ、そして町田という立地をとにかく前に打ち出しました。

そのほか、カフェで仕事をする人をターゲットに「カフェ×コワーキングスペース」というキーワードを使いました。
他にも「東京都インキュベーション施設認定事業」や「リモートワーク」「テレワーク」というキーワードも使用しました。「リモートワーク」「テレワーク」というキーワードは、今回のコロナ渦でも注目が集まったのでその波にもうまく乗れたのではないかと思います。

プレスリリースやブログなど、情報を配信する際には、SEOを考えたキーワードを散らしてWebマーケティングをしていくことの重要性をここでお伝えできればと思います。

Web広告の活用方法

Web広告に関しては自社で全て運用しており、主にFacebook広告Instagram広告を活用しています。理由は半径何キロ以内という立地や狙っている層にセグメントをかけてターゲティングができるからです。MEO対策で利用しているGoogle マイビジネスのデータを分析し、エリアを調整しています。

リスティング広告も一部利用しています。Web広告は運用会社に依頼すると一般的には運用額の約20%の手数料がかかります。100万円の広告費で20万円程度の料金がかかるぐらいが相場なので、広告費がそれ以下であれば自社での運用が一般的だと思います。

広告のキーワードとしては、フリーランスの方向けに「コワーキングスペース」、すでに起業している人向けに「シェアオフィス」、そして周辺キーワードとして、「Wi-Fiカフェ」「電源カフェ」「オフィス」「貸し会議室」「レンタルスペース」等を選定しています。

このようにオンラインでのマーケティング対策をしっかり講じることで、Googleで「インキュベーション 町田」と検索すると、BUSO AGORA に関連するページがずらっと表示されるようにしています。
Googleマップ・ホームページ・東京都認定インキュベーション施設のサイト・プレスリリースの記事・YouTube・Facebookの投稿・求人サイト・広告など、検索結果画面の半分近くがBUSO AGORAに関連する情報になっている状態です。
このように、ターゲットとするキーワードで検索した人が、必ずBUSO AGORAを見つけられるような状況を作っていくことが、コンテンツマーケティングやSEO対策で重要なことだと思います。

専門媒体の活用

それに加え、業界に強い専門媒体も活用しています。
飲食店では食べログやHOT PEPPER(ホットペッパー)のような専門媒体が強い傾向にあるように、コワーキングスペースにも専門媒体が存在します。そのような関連の媒体にもBUSO AGORAを載せていただけるよう、お願いをして回っています。

現在は、スペースマーケットさんにBUSO AGORAの会議室を登録させていただいています。会議室やレンタルオフィスで検索すると、検索結果画面のほとんどがスペースマーケットさんのページで埋まる状況なので、BUSO AGORAを知ってもらうための入口として力を貸していただいています。しかもスペースマーケットさんはSEOが強いというメリットもあります。ただし、競合対策はする必要があります。

コンテンツマーケティングの世界では、どのキーワードで市場を取りに行くのかを自分たちで決めることが必要です。
一度キーワードを決めたら、それを取るためにさまざまなメディアやツールを活用して、ひたすら発信していくことが大切だと考えています。

良い人が良い人を呼ぶ 紹介の大切さ

最後に、Webを活用した集客ももちろん大切ですが、最も大切だと思うのは紹介です。入居者さんの紹介によって新たな方に来ていただくことで、良い人が良い人を呼ぶというスパイラルが生まれます。
イベントや勉強会も紹介のきっかけになります。多くの入居者さんが、紹介や相談、イベントを通じてBUSO AGORAでつながっています。

私はさまざまな事業支援をさせていただいている中で、必ず「秘密の地図」と呼んでいるプロモーションマップを作成して、「どのチャネルにどう仕掛けていくとどれが当たるのか」をテストし続けています。皆さまもそのような取り組みをされてはいかがでしょうか。

本日お話させていただいたプロモーションに関する事業支援も行っています。本日の内容とあわせてご参考いただければと思います。

本日はありがとうございました。


この記事は一般社団法人コワーキングスペース協会が主催するコワーキングスペース運営者勉強会でお話いただいた内容をもとに作成しております。

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