コラム

小規模事業者持続化補助金について、中小企業診断士で新宿区立高田馬場創業支援センター施設長の田中健一朗さんにお聞きしました。(前編)


中小企業診断士で新宿区立高田馬場創業支援センター施設長の田中健一朗さんに小規模事業者持続化補助金についてお話を伺います。

平成30年度の小規模事業者持続化補助金が公開されました。
中小企業庁:平成30年度第二次補正予算「小規模事業者持続化補助金事業」(商工会議所地区分)の公募が開始されました
平成30年度第2次補正予算 日本商工会議所 小規模事業者持続化補助金

田中健一朗さん
中小企業診断士で新宿区立高田馬場創業支援センター施設長の田中健一朗さん

――平成30年度の第二次補正予算で、小規模事業者持続化補助金が公開されましたね。

はい。2019年4月25日に公募(受付)が開始されました。

――創業したら色々な助成金・補助金がある中で、ここ5、6年毎年あるのが小規模事業者持続化補助金です。この小規模事業者持続化補助金について本日詳しく伺うわけですが、まずは制度の概要からご説明をお願いします。

まず、この補助金はどのような方が使えるのかと言いますと、小規模事業者の方が対象です。中小企業基本法で小規模事業者が定義されていまして、業種によって異なりますが、商業・サービス業の方は常時就業する従業員の数が5人以下、サービス業のうち宿泊業娯楽業は20人以下、製造業その他は20人以下となっています。従業員がこれ以上いらっしゃると対象外になるのですが、1店舗のみ展開しているコワーキングスペースであれば活用できるケースが多いように思います。

まずはしっかりと募集要項を読むことが大切です

――ここでいう従業員数とは、雇用保険の適用対象者ということですか?アルバイトなどは含まれますか?

詳細は募集要項にも書かれているのですが、常時就業する従業員に含めないものがきっちり定義されています。①会社役員、②個人事業主本人及び同居の親族従業員、③申請時点で育休中、介護休業中、商業休養中の休業している社員は含まれません。次のいずれかの条件に該当するパートタイムの方も含まれません。①日雇いの方、②2か月以内の期間を定めて雇用されている方、③季節業務に4ヵ月以内の期間を定めて雇用されている方、④または雇用される所定労働時間が同一事業所に雇用される通常の従業員に比べて短い方。そのためパートやアルバイトは従業員数に含まれないという解釈です。ただしこれは細かい論点なので、募集要項をしっかり読んでいただいて、自社が対象となるのかご判断を頂ければと思います。また募集要項では判断に迷った場合は、地域の商工会議所に問い合わせするように案内がされています。

次に、何に使える補助金かという話ですが、「販路開拓」のための補助金ということになっていまして、比較的幅広い内容で使うことができます。販路開拓とは、新しいお客さんに来てもらうための試みや、既存のお客さんとのリレーションシップを強くするというような取り組みです。コワーキングスペースの場合、例えば設備や内装の改善、広告宣伝に使ってもいいです。内装の改善については、内装を良くして居心地のいい空間を作り、お客様のニーズを満たします、というようなストーリーですね。このように使える経費が幅広いというのも一つの特徴です。

――使える経費の項目も募集要項に記載されていますね。

はい。具体的にどのような経費に使えるかというのは、募集要項を見てください。募集要項の31ページに記載がありまして、①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費⑤開発費、⑥資料購入費、⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪車両購入費、⑫設備処分費、⑬委託費、⑭外注費となります。内装費の場合はここでは⑭外注費に該当するのかなと思います。

郵送前に商工会議所の確認印が必要です

――小規模事業者持続化補助金の補助額や補助率、期間について教えてください。

補助額は色々な特定の条件を満たせば増額されるのですが、一般的には、最大50万円になります。補助率は3分の2なので、75万円以上使ったら最大50万円が補助されるということですね。公募期間は4月25日に公開されて、申請書類の締め切りは6月12日(当日消印有効)です。注意点として、応募書類を郵送する前に、事業エリアを担当する商工会議所に申請種類を提出し、「商工会議所が確認した」という書類をもらう必要があります。締め切り前に必ず商工会議所に持っていく流れになるため、早めに着手して頂いた方がいいですね。私のいるエリアだと、東京商工会議所新宿支部になるのですが、過去締め切り直前の一週間くらいは予定がいっぱいになってしまうこともあったようです。キャパを越えて受け付けてもらえなかったり、郵送に間に合うタイミングで書類を出してもらえなかったりするリスクも想定されるので、必ず余裕を持って取り組んでいただきたいと思います。

――2019年4月25日にから受付が始まっていますが、その他のスケジュールを教えてください。

6月12日が提出締め切り、7月下旬が交付決定日です。交付決定日とは「補助金を出すのをあなたにしますよ」ということを持続化補助金の事務局が公表する日のことです。過去、下旬と書かれている場合、月末最終日がほとんどだったので、今回の場合は7月31日になると見込まれます。

交付決定日以降に使用した経費が対象

大切なことは、交付決定日以降に使った経費が補助金の対象になるということです。6月に提出したからと、勢い余ってお金がもらえることを見越して何かを買ってしまっても、その経費は補助金の対象にはなりません。交付決定日の7月31日以降に支出した経費が対象になるということを肝に銘じておいてください。

また、12月31日までが補助事業の実施期間となっていますので、2019年12月31日までに支払い等を全て終わらせる必要があります。その後、補助事業をやりましたという実績報告書の提出期限の2020年1月31日までに提出しなくてはいけません。この日までに、例えば物品を購入したのであれば、見積書・発注書・納品書・請求書・支払い証拠書類、例えば振り込み履歴書、実際に買ったものの写真などを書類にまとめて、こういう風に使いましたということを報告する必要があります。このあたりも詳細はしっかりと募集要項で確認してください。

書類に不備があると補助金が出ない可能性も

――例えばホームページを作ったのであればその画面のキャプチャ、会議室を作ったのであればリフォーム前後の写真を撮って提出するということですね。

はい。この際、たとえば見積書が足りませんということになったりすると、補助金が入金されない可能性もあるので注意が必要です。補助金の入金のタイミングはホームページに明記されていませんが、実績報告書を提出した後、春先にかけて、2020年2月から4月あたりに口座に入金されると見込まれます。実績報告書に不備があれば、遅れることになります。自分で一旦キャッシュアウトをして、あとからお金が返ってくるという流れなので、資金繰りに関しては慎重に行ってください。

――50万円を返してもらうためには、75万円を持っている必要があるといということですね。

そのとおりです。先に補助金をもらえるわけではないので注意が必要です。他にも勘違いしやすいのが、「7月31日交付決定で採択=必ず50万円もらえる」わけではありません。交付決定とは、もらえるかもしれない権利を手に入れたくらいに思っておくのが賢明です。最終的に要件を満たした実績報告書を提出しないと、補助金は交付されないということを知っておきましょう。過去、創業関係の補助金で、補助金がもらえると見込んで経費を支出したが、書類不備や対象経費ではないということが後から判明。結局補助金をもらえず、倒産した人がいるという話も聞いたことがあります。今回の小規模事業者持続化補助金は金額がそこまで大きくないので大丈夫だとは思いますが、慎重にされるに越したことはありません。

不明点は事務局へ問い合わせましょう

――申請した金額より、実際にかかった金額が安くなる場合もあると思いますが、補助される金額は、実際に使った金額に基づいて支払われるということですか?

はい。

――逆に、申請した金額より、実際に購入した金額が上回った場合はどうどのようになるのでしょうか?

ポイントとしては、経費計上の枠を大きくとっておいて、実際に支出したら少なくなりましたというのは問題ないということです。逆に申請時の金額より、実際に支出した金額が大きくなっても補助額が引き上がることはありません。経費の計上に関しては、例えば最大50万円の補助を受けたいのであれば、申請時点で75万円ぎりぎりの経費を計上するのではなく、例えば100万円分くらいの経費を支出する計画を立てる方があとから柔軟に対応できます。提出した申請書類に記載されていない内容の場合、先に事務局にその旨を申請してその変更について承認を得なければ変更することはできません。補助金の申請書類の提出日と実際に支出するタイミングにはタイムラグがあるので、当初想定していた内容と違うことをやりたくなる可能性はもちろんあるわけです。申請時に計上していた経費を使わなかったというのは問題ありませんが、申請時に計上していなかった経費を後から勝手に変更することはできません。また計上する経費の金額は基本的には増やせないと考えておいてもらうのがいいと思います。経費を何に使うかは多少の変更は可能です。ただ、事前に必ず事務局に相談してください。

――例えば、ホームページを作ると申請したのに、デスクを購入したという場合はどうでしょうか?

あまりおすすめはしません。変更を申し出ることはできますが、必ずそれが認められるわけではないからです。

――後編に続きます。
小規模事業者持続化補助金について、中小企業診断士で新宿区立高田馬場創業支援センター施設長の田中健一朗さんにお聞きしました。(後編)

(ご注意)
・募集要項と齟齬がある場合は募集要項を優先してください。
・本記事を見た上で採択されなかった場合でも責任は取れませんことを予めご了承ください。
・申請書類の作成は、申請者の責任において行ってください。

 


 

前半は、小規模事業者持続化補助金の概要について、お話を伺いました。

後半ではより深いお話を聞いていきます。
小規模事業者持続化補助金について、中小企業診断士で新宿区立高田馬場創業支援センター施設長の田中健一朗さんにお聞きしました。(後編)

国や地方自治体のコワーキングスペースに関連する補助金や助成金の情報や、利用者に対する契約書や利用規約の雛形の提供などは、コワーキングスペースを運営する側の事業者の人しか興味関心が無いと思いますので、情報としてはニッチかもしれません。しかしながら、コワーキングスペースの運営側の人にとってはキャッチアップしておくべき情報とも言えます。
今回のお話の小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者のみを対象とした補助金ですが、コワーキングスペースの運営を含めて正社員が5人以下の会社では有効ですし、コワーキングスペースを利用する人もそのような規模の会社もありますから利用者さんに対するアドバイスとしても有意義だと思います。
田中さん、色々とお話いただきまして、ありがとうございました。

 

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特に、このような国や地方自治体のコワーキングスペースに関連する補助金や助成金の情報、利用者に対する契約書や利用規約の雛形の提供など、コワーキングスペース運営に関する情報提供も会員向けにしています。

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