コラム

「コワーキングスペース Open Office FOREST」運営代表者の山内信子さんへのインタビュー(前編)


リモートワークなどの新しい働き方が広まる中で注目されているコワーキングスペース。そしてシェアハウスなどの普及で建物を「シェア」することも一般的になってきています。不動産投資先としても注目されるコワーキングスペース。

今回は、コワーキングスペースを始めようか迷っている人のために、2014年にコワーキングスペース業界に参入し成功を収めている池袋駅東口にある「コワーキングスペース Open Office FOREST」の運営代表者の山内信子さんへお話を伺いました。

「コワーキングスペース Open Office FOREST」の運営代表者の山内信子さん
「コワーキングスペース Open Office FOREST」の運営代表者の山内信子さん

取材日時:2019年4月22日(月)17時30分
取材場所コワーキングスペース Open Office FOREST

コワーキングスペースを作った経緯

きっかけは2011年の東日本大震災

もともと企業に勤めており、2001年に退職してWeb制作で起業されていた山内さん。

――コワーキングスペースを始めるきっかけは何だったのでしょうか。

企業を退職してからずっと娘と親子でWeb制作をしていましたが、2011年の東日本大震災をきっかけに、人と人とのつながりが大切だということに気付かされました。Web制作はオフィス内に引きこもりがちなのでこのままではいけない、何か始めようと考え始めました。

――なぜコワーキングスペースにたどり着いたのですか。

何か始めなければならないという思いはありましたが、その答えを見つけるのに3年かかりました。決意したのは2014年春です。いろいろ考える中で出会った、佐谷恭さんが書かれた「つながりの仕事術」という本を読んで「これだ!」と思いました。

――コワーキングスペースをやりたいと決意してから、実際に何をされたのでしょうか。

まずは、色々なコワーキングスペースを回らせていただきました。コワーキングスペースを実際にされている方のブログを読んだりもしましたね。同時に物件も探し始め、2014年7月頃にたまたま池袋で、現在の物件を見つけることができたんです。

山内信子さんが運営している「コワーキングスペース Open Office FOREST」の内観
山内信子さんが運営している「コワーキングスペース Open Office FOREST」の内観

当時はコワーキングスペースの知名度が低く苦労

――場所として池袋を選んだきっかけを教えてください。

物件を探し始めた頃は、中央区や港区などの都心部を希望していましたが、ビルのオーナーさんに、「コワーキングスペースがやりたい」と説明しても、なかなか理解してもらえませんでした。当時はまだ「コワーキングスペース」という言葉すら知られておらず、又貸しになるからダメだと何度も断られました。2か月くらい探していたのですが見つからず、当時お世話になっていた不動産屋さんの自社物件が池袋にあるということで紹介していただきました。そして、26、7坪の3階を借りることにしました。オープンは2014年10月です。

「つながりの仕事術」というのは、当時小田急線経堂駅のそばでコワーキングスペースを運営されていた佐谷恭さん方が書かれた本です。パクチー専門店の2階でパックスコワーキングというコワーキングスペースをされており今はもう閉店されました。

――本を読んで、コワーキングスペースをはじめようと思われたなんて、すごいきっかけですね。

実ははじめは、コワーキングスペースを利用しようと思って探し始めました。Web制作をしていたので利用者側としてコワーキングスペースに入り、そこで人との関係を構築していけばいいかなと考えていました。Webに関しては専門的な知識を持っているので、セミナーを開催するため、コワーキングスペースや会議室を使いたいな、と。ですが、なかなか利用者として理想のコワーキングスペースに巡り合えなかったんです。それで悶々としていた時に本に出合い、自分でやることを決意しました。

目指したのは女性でも利用しやすいコワーキングスペース

――ずいぶんたくさんのコワーキングスペースを回られたようですね。

そうですね。その中で、星野さん(今回のインタビュアー)が運営している埼玉県さいたま市の大宮駅近くのコワーキングスペース7F(ナナエフ)にも伺いました。アルバイトの方が受付をされていたのですが、とても親切に案内していただいて、やっぱりコワーキングスペースはいいな、と思いましたね。たくさんのブログも拝見しました。いろんなコワーキングスペースを見て回ったりブログを読んだりするたびに、自分でやりたいという想いは強くなる一方でした。

――コワーキングスペースを作るにあたり、コンセプトのようなものはあったのでしょうか?

はい。カフェのような、私たち女性でも入りやすいコワーキングスペースにしたいと考えていました。そこで、内装やインテリアなどはカフェのデザイナーさんにお願いしました。内装に関しては、理想を実現するためにお金をかけた方だと思います。

――これから始めようと思う人が気になるのが、コワーキングスペースを開くにはいくらくらい必要か?ということがあると思います。山内さんの場合は、いくらくらいの初期費用が掛かったのでしょうか?

初期費用として必要なものは、物件を賃貸するための頭金、内装費やデザイン費、備品代です。私の場合は、内装費にかなりお金をかけたというのもあり、800万円程度かかりました。

ただし、これは内装をこだわったためで、やろうと思えばもっと安く抑えられると思います。実際、その後7階に増床しましたが、その時は会議室など区割りをしたにも関わらず、3階よりも安く済みましたね。コワーキングスペースはお金をかけずにできることが魅力なので、特に今ほどコワーキングスペース業界が盛り上がっていない頃の開業でしたから、何お金をかけているんだと指摘され、笑われたこともありました。ですが、そこは自分のこだわりポイントだったので絶対に譲れませんでしたね。Web制作の自分のオフィスを兼ねていた、というのもあるかもしれません。

――コワーキングスペース Open Office FOREST はオープンして4年半。初期費用は回収できたのでしょうか?

おかげさまで、2〜3年の時点で回収することができました。女性の利用率も比較的男性が多いコワーキングの中では高いと思いますし、若い方にも使っていただいており、そこは内装をこだわったのがうまくいったのではないかなと思っています。

コワーキングスペースを実際に始めてみて

――今の利用者数はどれくらいでしょうか?

ドロップインと会員様、そして会議室利用も含め1日50名くらいです。月にすれば1500名くらいでしょうか。年中無休ではないのですが、土日もオープンしており、お休みは祝日だけです。今年のゴールデンウィークに関しては特別営業ということでちゃっかり営業いたします。コワーキングスペースはドロップインの受け入れをしていないところも多く、特に連休になると需要が見込めます。

――祝日も需要が見込めるなら、年中無休にしないのはなぜでしょうか?

やはり、営業をしていると例えアルバイトさんに任せていたとしても、心が休まりませんよね。いつ電話がかかってくるかわからない。オープン当初は日曜日と祝日を休みにしていたんです。そうすると日曜日もやってほしいというお声をご利用者様から頂いて。土曜日も夕方18時頃に早めに閉店をしていたのですが、そうすると閉店時にお客様が会計に並んでしまうんですよね。そんなこともあって、今の祝日休みという形に落ち着きました。

――運営状況、現状についてもう少し詳しく聞かせてください。

運営は、娘も一緒にしています。娘とはWeb制作時代から一緒に仕事をしていますが、彼女もデジタルハリウッド大学の講師の仕事もしており、ずっとコワーキングスペースにいるというわけではありません。そのため、アルバイトさんにも頑張っていただいています。

営業時間は、平日が朝9時から夜22時、土曜日曜が朝10時から夜20時までです。

――月額の会員様はどれくらいいらっしゃるのでしょうか?

月額の会員様は、60名くらいです。うち半分程度が住所利用をされている方ですね。住所のご利用は、会員になってさらにオプションで6000円です。他にも6カ月以上のレギュラー会員、1ヶ月限定会員。いろいろな利用方法の会員様をトータルしての60名です。

――価格帯はホームページなどにも載っているとは思うのですが、ドロップインと月額はそれぞれどれくらいの価格帯なのでしょうか?

Web制作に関しては専門なので、ホームページはしっかり作っています。月額料金はレギュラー会員で9900円、オプションで住所が6000円、住所だけというのはないので、住所を使うためにはレギュラー会員になる必要があります。それ以外には、3階にあるブース席はプレミアムプラン固定席で自分だけの空間として使えます。それは月額38000円でロッカーも住所も使えて、椅子とテーブルも少しいいものを使っています。そこは人気のお席で、いつも満席になっています。1ヶ月の短期会員様は15000円から、他にも土日だけ、平日だけなど、ご利用いただきやすいように細かく価格設定をしています。

――短期会員様の需要はあるのでしょうか?

ありますね。とりあえず1ヶ月だけ平日使いたいなど。受験生というケースもありますし、夏休みや冬休みを中心に学生さんもいらっしゃいます。ビジネスマンの場合は、資格試験などの勉強の方が多いように思います。

始めの数ヶ月は、なかなかうまくいかず苦労

今は順調に運営されている山内さんですが、オープン当初はうまく集客できない時期もあったそうです。

――現在に至るまでの経緯を教えてください。

値段設定に関して、初めは、今よりもう少し値段を高めに設定していました。ドロップインは現在1時間450円、3時間を超えると1Day料金となり1800円です。以前は2時間で1000円、2時間を超えると2000円、という2パターンのみでした。

2014年の10月14日にオープンし、3日目に初めてのお客様が来ました。つまりオープンから2日間誰も来なかったのです。初月の売り上げは2~3万円でしたね。大丈夫かな、と焦りましたね。

今でこその利用者数だが、オープン当初は集客に苦労したという。
今でこその利用者数だが、オープン当初は集客に苦労したという。

――オープン当初は集客がうまくいかない中、どのような対策をされたのでしょうか?

私の場合はWeb制作という仕事がありましたので、その売り上げがあれば家賃くらいはまかなえたので、何とか半年くらいはやっていけるという自信はありました。もちろん集客のためにホームページの制作は頑張りましたね。10月にオープンして、12月にはオープンキャンペーンでレギュラー会員12000円のところ、30名限定で9900円になるキャンペーンをしたところたくさんの反響をいただきました。

結局、そのまま9900円という値段が定着し、今でもずっとキャンペーン中です。他にも、コワーキングスペースは2時間単位の設定をされていることが多いので、1時間単位で利用できるという点にも自信がありました。

――オープン当初は集客がうまくいかず苦労していた山内さんですが、その後はどうなったのでしょうか?

12月のキャンペーンを行った頃からは、順調でしたね。知り合いをご紹介頂いたり、口コミもあって、徐々に会員様が増えてきました。1月には38000円のお席も埋まってきて、半年もたたずに売り上げは安定してきました。当時はまだアルバイトさんを雇う力もありませんでしたので、人件費は自分たちだけでした。コワーキングスーペースは家賃以外の固定費もかかりませんし、受付にいても満席だとしても入れかわりどんどんお客さんがくることもありませんので、対応する頻度もあまり高くありません。そのため、自分の仕事であるWeb制作もすることができるので、一石二鳥でしたね。夏ごろには来ていただいたのに満席でお断りすることも出てきたので、今後このまま3階の狭いフロアでやっていくのはきついかなと思い増床を考え始めました。

 


 

コワーキングスペースをオープンした経緯や、実際に始めてみた当初のお話を伺いました。「コワーキングスペース Open Office FOREST」は、現在はフロア増床もされていて、山内さん自身は森永製菓が田町駅近くで運営しているコワーキングスペースの業務委託もご自身の会社として受けられています。増床の経緯や業務委託をされているお話などは後半に続きます。

「コワーキングスペース Open Office FOREST」運営代表者の山内信子さんへのインタビュー(後編)

 

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